DCリークスに暴露されたパウエルの私用メール
DCリークスに暴露されたパウエルの私用メールは、ネオコン的になっていたクリントンの外交路線に対する彼の不満を露呈していた。12年リビアのベンガジで起こった米領事館襲撃事件では、米国の介入主義を婉曲的に批判し、同事件によるクリストファー・スティーブンス大使の死は、大使本人とともにクリントンの責任でもあると発言していた。
クリントンが個人メール・サーバーを使用していた問題に絡み、パウエルも同様に民間のメールを使っていたと名前が挙がっていることにも不満を表していた。トランプに呆れていたパウエルだが、同じエスタブリッシュメント出身の候補であるクリントンとの間にも確実な距離ができていた。
極めつきは、パウエルが「個人的には尊敬しているが」としながら、クリントンには投票したくないと発言していたことだった。また、クリントンに対し「多くの経験と無限の野心を持つ70歳で、欲張りだが変化を嫌い、いまだに家で外見だけの女どもを突きまくっている夫を持っている」と非常に開き直った厳しい評価を下していた。
パウエルの一連のコンプロマートは、ソロスのそれに比べ、それほどセンセーショナルではなかったが、暴露のタイミングが絶妙だった。クリントンは16年9月11日に行われた米同時多発テロ事件を追悼する記念式典に出席中、体調を崩し気絶しかけた。彼女が倒れこみ、支えられながら車に戻る様子が、一般市民によりスマートフォンで撮影され、動画がYouTubeに掲載された。
この動画はすぐに全世界に拡散され、米国ではクリントン候補の健康を疑う議論が盛り上がった。9月14日のパウエルのメール暴露は、こうした時期を狙いすましたかのように、クリントンに追い打ちをかけた。パウエルがクリントンの健康問題に深刻な懸念を示すメールもあった。トランプ支持者の間で、クリントンの健康リスクは実際の問題として定着した。
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