フランスの歴史人口学者・家族人類学者で、日本でも人気の著者。本書は雑誌で折に触れて行われてきた時事的なインタビュー・対談記事から、広義の「日本論」をまとめたもの。論点はコロナ、移民政策、天皇制など多岐に渡り、核武装論を始め、著者ならではの刺激的な“暴論”が満載。ただし、そこに至る根拠は丁寧に示され、トッド初心者にも論理を追いやすく、また、家族論を始め、読者自身の問題に引きつけて考えられる点も魅力だ。
「左派でありながら国家を論じられる点が著者の魅力です。我々日本人が戦争に至った過去の歴史を否定し過ぎるあまり内向きな思考に陥ることや、アメリカに盲目的に追随することに警鐘を鳴らしている。『日本スゴい!』のような保守とは違う、冷静な視点で“普通の国”としての日本の自立を考えているんです。
高等教育を受けた知的エリートである先進国の左派リベラルが、耳当たりの良いことをいいつつ、結局は体制順応派となっていることにトッド氏は偽善や矛盾を感じている。トランプ支持など、一見“暴論”に見える見解の根底には、そうした怒りもあります」(担当編集者の西泰志さん)
刺激的なタイトルもヒットの大きな要因だろう。
「本人は出版後に、『このタイトルはあまりに暴力的だ』と苦笑いしていましたけど(笑)」(西さん)
2021年11月発売。初版3万部。現在3刷6万部