1ページ目から読む
2/3ページ目
『今度はパパの血で頑張ろう』
それでも夫婦はこのハプロ移植に賭けていた。ドナーには夫の俊行さんが手をあげた。
「瑠璃はまた入院だとわかると『ヤダー‼』って凄い剣幕で怒っていました。『お兄ちゃんの血が疲れちゃったから、今度はパパの血で頑張ろう』と説得して、約4ヶ月間、娘と2人で東北にある病院に入院しました。
やはり治療は前回よりも大変で、副反応に悩まされました。下痢や嘔吐が続き、口の中も口内炎でなんにも食べられないこともありました。高熱が出たこともあります。ちょうどタイムリーに『鬼滅の刃』が流行っていたので、炭治郎と禰豆子が助け合っている姿を見せていました。『お兄ちゃんと瑠璃ちゃんと同じだね』って。病気を鬼に例えて説明したりしていましたね。
お兄ちゃんは瑠璃のことをとても心配してくれて、パパともよくテレビ電話をしてくれました。病気はとても憎いですが、それでも救われたことは、お兄ちゃんの妹への優しさを知れたことです。苦しむ妹をみて『できることならかわってあげたい』とか『もし髪が抜けて笑う子がいたら俺がやっつけてやる』とか……私も随分と勇気付けられました」
だが、家族の願いも虚しく、ハプロ移植でも瑠璃ちゃんの病気は回復まで至らなかった。
いま、家族が藁をもつかむ想いで最後に望みを賭けているのが、近年がん治療において注目されている“がん免疫療法”の一種「CAR-T細胞療法」だ。国内においては2019年に急性リンパ性白血病への治療薬としては承認されているが、急性骨髄性白血病では治験が開始されたばかりだという。