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 大統領選でライバルだった与党候補の李在明は選挙期間中、ウクライナ事態に悪乗りし「ゼレンスキーのような政治アマチュアを国家指導者にするとろくなことはない」と悪態をついていた。尹錫悦へのあてつけだった。

 しかし尹には政治的手腕への疑問、不安の一方で、逆に“政治的垢”がついていないことから“大化け”への期待がある。

「饒舌で知ったかぶり」vs.「正直で無骨」

 政治素人ながら検事総長出身なので、過去の軍人大統領のように組織管理・運営はよく知っていて決断力がある。学者の家庭に生まれソウル大卒ながら、司法試験で9回も浪人したという忍耐力と努力はただ者ではない。親分肌で統率力があり正義感が強い。

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 選挙中のテレビ討論で、政策通が自慢の李在明から環境問題がらみで「リーベック(RE100、企業の再生エネルギー使用対策のこと)についてどう考えるか?」と質問された際、「え、それ何のことです?」と聞き返した。李は「そんなことも知らないのか」と冷笑していたが、世論は多弁、饒舌で何でも知ったかぶりの李より、正直で無骨な尹の対応にかえって今後を期待したのだ。

文在寅 ©AFLO

 政治的経歴はないが、文政権については「学生運動上がりによる左翼仲間内政権」と批判。自らの政治基本として自由・民主主義・市場経済・人権・法治を強調し「常識が通用する社会にする」と繰り返し主張している。端的にいえば韓国を保守へ軌道修正するというのだ。

チョ・グク法相への追及がなかったら……

 ここで尹錫悦の足跡を振り返れば、彼は文在寅の有力後継者だったイケメン政治学者、曺国(チョ・グク)法相の不正疑惑を追及したことから文政権との関係が悪くなった。

 あの時、尹が目をつぶっておれば尹はただの検事で終わり、政治的に生き残った曺が与党大統領候補になって当選していただろう。彼は名うての社会主義者で不義・不正の左翼政権は確実に延長された。尹の正義感が結果的にそれを阻止したことになる。尹の新大統領への道はその時に運命化していたのかもしれない。