“世界小麦争奪戦”でパンはいくらになる?
「そこにウクライナ侵攻が加わり同じレベルで小麦価格が上昇すれば、また10%ほど値上がる可能性があります。
ロシアの小麦生産量は世界4位。ウクライナは7位です。実は、穀物の大量生産に適した場所は地球上にほとんどありません。アメリカ中西部やアルゼンチンなど南米の一部地域、そしてロシアとウクライナぐらいです。供給を増やすには、灌漑して耕作地を増やすぐらいしか方策がなく、それには莫大な金と時間がかかります。つまり、急に増やすのは無理なのです。
ちなみに小麦は乾燥した冷涼な地域で栽培されるので、温暖化が進むとドンドン栽培面積が減っていくという恐ろしい予測もあります。今後、世界的な“争奪戦”が起こるのは必至でしょう」
「それならパンを買わなければいい」と思う人もいるかもしれないが、ことはそう単純ではない。価格上昇の波はあらゆる食品に及び、「値上げしないモノを探す方が難しい」状況に陥る可能性があるという。
小麦の次はトウモロコシも大豆の価格も上昇
「小麦の価格があがれば、その代替物となるのがトウモロコシと大豆。例えば、小麦を使っていたお菓子が値上がれば、『じゃあ小麦はやめてトウモロコシを使おう』となるのは自然ですよね。だから小麦が高くなれば、トウモロコシも大豆も高くなっていくのが常なのです。
トウモロコシを食べるのは人間だけではありません。牛や鶏などの家畜も『飼料』として食べる。そうなれば肉も卵も値上がりし、牛丼屋の生卵セットも500円では食べられなくなるかもしれません。コンビニのお弁当は小麦も肉も全てを含んでいるので、確実に値上がりします。サンドイッチも同様で、すでに8日にはローソンが『たまごサンド』を228円から246円に値上げすると発表しています」
日本の伝統食にも危機が迫っている。
「ロシアへの経済制裁への対抗策で一部原料の禁輸の検討をしているいま、最も打撃が大きそうなのが蕎麦なんです。実はロシアは世界有数の蕎麦大国で、世界の蕎麦の3割以上を生産している。日本のそば粉も原料の多くをロシア産に頼っており、それがなくなると一気に消費に追いつかなくなる可能性があります」(対露貿易商社関係者)