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日本が「資源大国ロシア」を後押ししてきた

 “対岸の火事”どころではないエネルギー問題だが、そもそもロシアが資源大国にのし上がった背景はどうだったのだろうか。そこには日本が深くかかわっているという。

 大手経済誌記者が解説する。

「『資源大国ロシア』は、日本が少なからず後押ししてきた側面があります。ロシアは資源の輸出に頼って成長を続けてきましたが、そもそも日本がLNG(液化天然ガス)の輸入をはじめて約50年間、需要量は日本がほぼずっと世界で断トツの1位、韓国が2位でした。ヨーロッパや中国など地続きの国のようにパイプラインで天然ガスを得られない日本や、北朝鮮が間にある韓国にとって、天然ガスは液化して海を通し輸入するほかなかった。そのため、ロシアのLNG開発への投資は惜しまずやってきたわけです。

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 特にこの10年は、北極圏の膨大なガス田を開拓する、『北極バブル』。それを可能にしたのは日本です。例えば北極圏を航行できる『砕氷船』の開発や、LNGプラントの建設などは日本の技術に負うところが大きく、民間と政府が一緒になって推し進めてきました」

天然ガスタンカー ©️getty

ロシアからのLNG輸入量は全体の約8%

 ちなみに、2021年の日本のロシアからのLNG輸入量は657万トンと全体の約8%だ。

「こう聞くと、たいしたことがないと思われるかもしれませんが、657万トンの穴を埋めるのはめちゃくちゃ大変です。普通、LNGの契約は1つのプラントで数十万トンぐらい。100万トンを超せば、かなりの大型契約です。プラント建設には1兆円規模の予算が必要ですし場所も限られ、建設時点で既に売り先が決定しています。LNGプラントの建設から、実際に手元に届くようになるまで5年はかかるでしょう」

 13日、岸田首相が原油価格の高騰について、国内のガソリン価格を維持すると宣言。「私自身、資源外交を積極的に展開し、歴史的関係を築いてきた中東産油国への働きかけを行う」としたが、話はそう簡単ではないようだ。

「最近、グローバルエネルギー企業『シェル』がサハリンから撤退しましたが、それは資本が大きく、アフリカなど他地域にも根を張り、特別ロシアにこだわる必要がないから。政府関係者は『あらかじめ“ロシアリスク”を勘案し、手を引きやすいように契約を結んでいたのだろう』と話していました。いずれにせよ、日本企業の“即時撤退”は難しいようです」(同前)