「ロシアは紛れもなく世界一の資源大国。資源は国が管理し、外交の道具に使うべきだ」

 1997年、44歳と政治家として脂の乗った、後のプーチン大統領は並々ならぬ野心を燃やしていた。サンクトペテルブルク国立鉱山大学で経済科学準博士の学位を得た際の論文には、ソ連崩壊で苦境に陥るロシア経済にどう道筋をつけるのかの戦略が綴られている。

 こうしたプーチン大統領の術中に、既に我々はハマっているのかもしれない。

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2000年に撮影されたプーチン大統領 ©️getty

「我々は既にロシアに“首根っこ”を掴まれている」

 ウクライナ侵攻直後、ロシアに対する経済制裁を即座に発表しなかった日本政府を批判する意味で、「対岸の火事」がツイッターのトレンドワードに入った。結局は欧米各国の判断から半日遅れて経済制裁に踏み切ったが、困るのはロシアだけではない。

「我々は既にロシアに“首根っこ”を掴まれている」

 そう警鐘を鳴らすのは、経済評論家の加谷珪一氏だ。

「ロシアには食とエネルギーという2つの最強カードがある。半年経てば、ウクライナ侵攻は、我々の家計に確実に影響を及ぼします。

 わかりやすく食品からいきましょう。今回のウクライナ侵攻の影響を受け、シカゴ商品取引所では4日、小麦の先物価格が14年ぶりの高値を記録しています。こうした小麦価格の上昇で、最初に値上げするのはパンです。

 国際価格の上昇が、日本に波及するまでにはタイムラグがあるので、値上げが始まるのはおおよそ半年後。簡略的なイメージとしては、それから2カ月毎に、お菓子→カップ麺→レストランと値上げが進み、1年後にはほぼ全ての食が値上がりするでしょう。小麦が製品に占める割合が大きいモノほど、早く影響を受けます」

 そもそも小麦は、2021年に既に1.5倍程度に上昇し、パンは10~15%値上げしているという。要因は新型コロナからの景気回復期待や、新興国の成長などだ。