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車の性格に合わせて仕上げ方を変える

 どのような車に仕上げるかについては、事前に担当者間で話し合い、方針をすり合わせていく。

「どう弄るかは車のキャラクターによっても違いますね。ソアラは高級車ですけど、あっちのレビンなんかは当時の若者が元気よく走らせていた車なので、やっぱりああいうのはある程度弄りたくなりますね」(KINTO・布川氏)

 しかしカスタマイズを加えるにも、担当者間での合意形成が必要だ。現状、レビンにはそこまで手が入っているわけではなく、ホイールなどを現代的なモデルに交換するに留めている。

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レビンのリアビュー。張り出したフェンダーが印象的だ

「人によって好みは全然違うじゃないですか。ぼくと各担当者の間でも、ぼくとお客さんとの間でも。だから、ほんとは仕様が違うのを3台くらい作りたいですよね」(同前)

 こうしたカスタムや直し方をめぐる方針は、実車の状態を把握しながら目線を合わせていく部分も大きい。レストアを担当する新明工業には、その時々で打ち出される方針に対応する柔軟性が求められる。

「我々はトヨタ博物館の展示車みたいに、永代保存みたいな整備もできますし、大がかりな作業も、点検整備みたいなこともできます。どこをどこまで、どうやって直すかっていう話になるんですが、その辺はKINTOやトヨタの担当者の方と話しながら対応しています」(新明工業技術部部長)

エンジン周りの調整を進めるベテラン整備士

 蓄積されたノウハウは、作業における引き出しの多さにつながっている。旧車のレンタカーという新たな試みのなかで、新明工業は縁の下の力持ちとして車両の品質を担保しているわけである。

「今普通に乗れる旧車」の難しさ

 レビンは1974年式と製造から半世紀近くが経つが、仕入れ時から自走可能な状態ではあった。とはいえ経年により違和感の残る部分も多く、気になる箇所を潰していく作業が延々と続く。

 ユーザーへの貸し出しに向けて、テスト走行を通じた品質チェックを繰り返す。KINTOの布川氏も自らハンドルをとる。

「乗れば乗るほどいろいろ気づくところが出てきますね。この車に限らず、雨が降ってるとなんか漏れてるとか、ヒーターが効かないみたいな。今のお客さんでも乗れるように、という目線でバグ出ししています」

 レンタカーとして貸し出すうえでは、やはり現在の車に慣れたユーザーも想定しておく必要がある。とはいえ半世紀近くも前の車では、「普通に乗れる」の基準もまったく異なるがゆえに、直す側の新明工業にとっては厳しいチェックが入ることもあるようだ。