「たとえば以前であれば、オイルと水をつぎ足しながら維持する、といったことは当たり前でした。しかし今の車からすると、そんなことはありえないわけです。どこかから空気が入ってきて音が出るとか、当時では当たり前だったところにもチェックが入るので、厳しいこともありますね」(新明工業技術部部長)
現在の「普通」に照準を合わせる難しさは、旧車レンタカーという形態に特有の悩みなのかもしれない。
取材中に車両のトラブルが発生!
取材中、レビンのエンジンからの水漏れが発覚。報告を受けた石川氏は「うそぉ。ほんじゃあかんがや」と反応するが、そのトーンには一切焦りの色はない。イレギュラーな事態も、長年の経験からすれば「あるある」に過ぎないかのようだ。
「エンジンヘッドとエンジンブロックの間から水が漏れているんですね。パッキンを外して、ブロックとヘッドを結合しているボルトを抜いて、これから直していきます」(同前)
技術部部長にそう説明を受ける筆者の目の前で、石川氏は漫談のような調子で作業担当者とコミュニケーションを取っている。けれどもエンジンルームに向けられた視線には、職人特有の鋭い光が宿る。それを見ながら、技術部部長は「死にそうにないでしょ」と筆者に耳打ちする。
KINTOの旧車レンタルは、さしあたりこの新明工業を発着点として展開される。ユーザーにとっては、借りる車両への期待はもちろん、「へんなじじい」を中心とする職人集団に触れることも、楽しみのひとつになるのかもしれない。
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