「もう中絶もできない。クソッタレ、面倒だ」
世間にさらなる衝撃を与えたのは、張が公開した音源だ。離婚の話し合いにおいて、鄭は「子どもはもう妊娠7カ月で中絶もできない。クソッタレ、面倒だ」と言い放っていた。ドラマで見せる顔とはまったく違う真実の姿だ。
世論の怒りを受け、中国当局は動いた。テレビや映画を管轄する国家ラジオテレビ総局は、鄭を人民の模範たりえない「劣跡芸人」(悪行芸能人)と指弾した。公開予定の作品から出演シーンが削除されたほか、過去の作品も配信中止にされたりモザイク処理されて顔を隠された。
そして8月、上海市税務局が鄭を脱税で摘発し、2億9900万元(約53億8000万円)もの追徴課税等を科した。脱税のほとんどは2019年撮影のドラマ「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」の出演料だ。契約書では4800万元(約8億6400万円)とされたが、実際には1億6400万元(約30億円)だった。差額分は鄭の個人事務所への出資という形で処理されたという。
1本30億円という出演料には驚くしかない。問題のドラマは全60話の予定で、1話あたり5000万円になる。日本のトップ女優の10倍以上という破格の金額だ。
カネになるビジネスには一気に人が集まり過当競争になるのが中国だ。ドラマや映画も山のように作られており、固定客を持つ有名俳優、トップ女優がいなければ、誰にも見られぬまま埋もれてしまう。そこで、客を呼べる有名人の出演料は近年、天井知らずで高騰していた。
この状況を是正しようと、出演料は全制作費の40%以内、主演俳優のギャラは全出演料の70%以内に抑えるという業界団体のガイドラインが発表されていたが、守られなかったことになる。ちなみに、今年2月に発表された「第14次5カ年計画中国ドラマ発展計画」に同様の規定が盛り込まれ、出演料規制はより強制力の強い業界規制へと格上げされている。
鄭と並ぶ特大級のゴシップとなったのが、呉亦凡(ウーイーファン、クリス・ウー)の性的暴行事件だ。クリスは1990年生まれの中国系カナダ人だ。韓国の人気アイドルグループ「EXO(エクソ)」のメンバーとしてデビューしたが、脱退しソロアイドルとなった。日本でも韓流ファンを中心に少なからぬファンを持つスターだ。