置かれた場所で咲くますらお達
陸上自衛隊では、普通科、航空科、通信科などをはじめとして16職種があり、入隊後に職種希望を提出します。ただ、適性試験の結果や組織の要望を踏まえて配属されるので、「ヘリコプターの整備をしたいから航空科第1志望!」と提出しても普通科へ配属になることは特に珍しいことではありません。
私は、幹部候補生学校で教官から「人事はひとごとだから諦めろ」と言われたことが何回かあります。つまり希望は出せますが、願いが叶うかどうかはまったく別です。教育隊などで優秀な成績を残すと希望が叶うという話も一部ありますが、優秀だからこそ「彼は賢く優秀だから通信科に入れよう」といった組織の要望が出ることもあります。
組織の要望と自分の要望がマッチングすれば希望職種に行けるが、その可能性は高くないというのが現実なのです。
また勤務地も全国にあるため、東京出身の新隊員が北海道や九州に行くこともあります。一方で希望の勤務地と職種がバラバラになるとさすがに可哀想であり、早期離職にも繋がってしまうので「北海道の××駐屯地なら希望職種になれるよ」といった打診はあります。職種よりも住んでいる地域を優先する場合は、「地元の○○駐屯地がいいです。職種はなんでもいいです」といった希望を出すことも可能です。
「ハイor YES」と答えて勤務
また、基本的に入隊時に決まった職種は定年退官をするまで変わることがないので、教育隊や幹部候補生学校での配属で自衛隊人生が決まることになります。私の同期にも様々なパターンの人がいました。普通科が第1志望だったのにパイロットの適性があったのでヘリコプターのパイロットになった人や、逆にパイロット希望なのに適性がなく戦車乗りになった人もいます。また、幹部の場合、首都圏勤務を熱望してもなぜか北海道の道東に送られることもありますが、そこは「ハイor YES」と答えて勤務することになります。
少しかわいそうなように思えますが「置かれた場所で咲きなさい」という言葉がある通り、どの部隊・どの地域に行っても自分の役目を果たすことが「ますらおとしての使命」であり、自らの運命だと受け止めるべきなのです。
一方で、「嫌だと思って行ったら楽しかった」「とてもよい部隊で思い出になった」ということもよくあるので「泣きながら部隊へ赴任をし、最後には部隊を去りたくなくて泣く」の精神を大切にすることがますらおには大切といえるでしょう。
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