昨今の外国人労働者よりもいち早く来日し、日本人男性と結婚した外国人女性たち。夫の妻、子の母親、義父母の介護者として家庭内の役割を果たし、さらに飲食店や工場、介護現場などで働く。離婚や夫に先立たれ、ひとり親として家計を支えつつも、不安定な生活を続ける人も少なくない。地域で長く暮らしながらも、うかがい知れない彼女たちの「孤独」に耳を傾けた。
日本国内の外国人女性と日本人男性の結婚
日本国内での国際結婚は1975年以降、「妻が外国人・夫が日本人」が「夫が外国人・妻が日本人」を上回っている。83年以降は2~3倍程度の開きがある。2019年はそれぞれ1万4911組、7008組。「妻が外国人・夫が日本人」の婚姻届件数のピークは06年の3万5993組。妻(外国人女性)を国籍別に見ると、フィリピン1万2150人、中国1万2131人、韓国・朝鮮6041人、タイ1676人など。19年は中国4723人、フィリピン3666人、韓国・朝鮮1678人、タイ986人など。
日本人にはなれないまま
「きょうは何日ですか。何曜日? きょうが日曜日ならあすは何曜日ですか」。駒ケ根市の特別養護老人ホーム「かがやき」。フィリピン出身の中嶋メイさん(50)は2021年4月25日、カレンダーを手に15人ほどの入所者を前に聞いていた。昼食前のレクリエーションの時間だ。
07年2月に日本人の夫が急死してから、地元駒ケ根市周辺の工場でパート社員として働いた。08年のリーマン・ショックや11年の東日本大震災の不景気で仕事が減った。外国人から切られていく。畑仕事や短期の仕事もした。安定した仕事に就いて将来を見通したい―。強く思うようになった。
「日本人のお母さんが良かった」。夫の死後、小学校に入学した長女に言われた。日本の文化を知らず、学校のお知らせも読めない母親が嫌になったのだろうと思った。地域でボランティアが運営する教室で日本語を学び始めた。
15年、自宅近くに住む看護師の60代日本人女性と仲良くなった。「うちの施設で働いてみない?」。勤め先の「かがやき」を紹介してくれた。介護職の正社員を募集していた。日本語の会話に少し自信が付いてきた頃だった。