在留資格を持たない外国人を強制的に収容する入国管理施設。そこで行われる収容者への非人間的な扱いが、大きな問題となっています。茨城県牛久市にある東日本入国管理センター、通称「牛久入管」も全国に17カ所ある施設のうちの一つです。

 ここでは、信濃毎日新聞社がコロナ禍の外国人労働者問題を取材してまとめた書籍『五色のメビウス』より一部を抜粋。「牛久入管」収容者たちが語った、施設や収容生活の実態を紹介します。(全2回の2回目/前編を読む)

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資格更新が1日遅れただけで……

 アクリル板の向こうのミャンマー人男性(33)の目は潤んでいた。2年前、「発熱で在留資格の更新が1日遅れた」だけで東京出入国在留管理局(東京)に収容された。茨城県牛久市の「牛久入管」に移されて8カ月になる。「ここにいるなら国に帰って戦闘して、死んだ方がまし、とも考えるんです」

 男性は国軍と少数民族武装勢力の紛争が続いてきたミャンマー北部のカチン出身。2015年、留学生として来日し、現在難民申請中だ。

 1日の大半を居室で過ごし、午後5時すぎの夕食の時間から翌日の朝まで部屋は外から施錠される。居室では暇を持て余す時間が長く、「自分の心がコントロールできず、眠れない夜がある」。そんな時には差し入れでもらった漢字帳を書き写し、心を落ち着ける。「社会の助けになる力があるのに収容される意味が分からない。自分が人間じゃないみたいです」

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 繰り返し難民申請する人を強制送還できるようにする入管難民法「改定」の見送りが決まった日の翌19日。記者は牛久入管と呼ばれる東日本入国管理センターを訪れた。1995年から通い続けているボランティア田中喜美子さん(68)=茨城県つくば市=に同行して6人の収容者と計3時間にわたって面会。収容生活の一端に触れた。

「牛久入管」の所在地

 93年末に開所した牛久入管はJR常磐線牛久駅からバスで20分ほど。雑木林に囲まれ、近くには産業廃棄物中間処理施設や少年院がある。2つの収容棟があり、収容定員は700人。運動場は高いコンクリート壁に遮られ、外から様子はうかがえない。

 検温を済ませて施設に入り、1階の受付で「面会許可申出書」を記入する。住所、氏名、面会者との関係のほか、運転免許証の12桁の免許証番号を書く欄もあった。面会相手の国籍や名前も書く必要があり、相手の名前が分からないと面会はかなわない。