面会室に入る前にはゲート型の金属探知機を通り、携帯電話やカメラなどは持ち込めない。一般の面会室は5部屋。ほかに、弁護士用の面会室が2部屋ある。部屋は幅2メートル、奥行き3メートルほどで中央のアクリル板が面会者と収容者を隔てる。面会中の立ち会いがないことを除けば、受刑者らが入る長野刑務所(須坂市)の面会室とそっくりだ。面会時間は1回30分まで。
出入国在留管理庁によると、牛久入管には24日現在、64人が収容されている。いずれも男性。田中さんによると、収容者は19年まで300人程度で推移してきたが、新型コロナウイルス感染拡大後、一時的に収容を解く「仮放免」が急増している。
非正規滞在で退去強制処分となり4年9カ月の収容を経て、5月下旬に仮放免されることが決まったベトナム人男性(36)は「牛久の大学を卒業します」とおどけて見せた。ただ仮放免中は働くことができない。「どうやって生活すればいいんですか」。表情を曇らせた。
牛久入管では20日、職員の新型コロナ陽性が確認され、21日に記者が予定していた面会も中止に。収容者男性によると21日朝から23日朝まで部屋は外から施錠され、シャワー以外では出られなかった。
入管施設に収容されるのは、在留資格が失効した人や正規の入国手続きを取らなかった人など。収容の根拠は法相に指定された各入管の主任審査官が発付する「収容令書」「退去強制令書」だ。犯罪に対する刑罰ではないのに、いつ収容を解かれるかは分からない。裁判所の審査もなく、実態は「ブラックボックス」に包まれている。
「外国人をたたき出すための施設」
目はくぼみ、声は弱々しく、時折せき込んだ。
2021年5月19日、「牛久入管」と呼ばれる東日本入国管理センター(茨城県牛久市)の面会室に、50代のパキスタン人男性が車椅子に乗り、つえを持って現れた。インドとの領有権争いがあるカシミール地方出身だ。
「中で死んだら、誰かを助けられるかもしれない」