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「ここにいるなら国に帰って戦闘して、死んだ方がまし、とも考えるんです」“牛久入管”収容者たちが女性ボランティアに語った衝撃の実態

「ここにいるなら国に帰って戦闘して、死んだ方がまし、とも考えるんです」“牛久入管”収容者たちが女性ボランティアに語った衝撃の実態

『五色のメビウス』より #2

note

収容者たちと面会するボランティアの田中さん

 難民申請が退けられ、収容されてから、もう6年。施設内の対応に抗議するため、1日3回出される食事「官給食」を拒否している。胃の調子が悪くなり、「おかゆを出してほしい」と頼んだが、受け入れられなかった。

 その後は、支援団体の差し入れを少しずつ食べたり、砂糖を水に溶かして飲んだり。80キロだった体重は45キロに落ちた。

 ボランティア団体「牛久入管収容所問題を考える会」代表の田中喜美子さんは面会中、男性の言葉に「うん、うん」「本当にひどいな」と相づちを打つ。男性が「死」を話題にすると「もうちょっと頑張ってほしいな」と励ます。「またお願いします」。男性は面会の終わりに、田中さんに声を掛けた。

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「牛久入管」で面会を重ねた収容者との会話内容を記したノートを見ながら、自身が経営する喫茶店で話す田中さん。(2021年5月21日、茨城県つくば市)

 田中さんは経営する喫茶店が定休の水曜日に面会を重ね、寄付で集まった日用品も差し入れる。19日は洗剤や砂糖、新聞、サプリメントなどを差し入れたほか、仮放免が近い人にテレホンカードやスーツを贈った。

 面会するためには「許可申出書」に収容者の名前を記す必要がある。長年顔を合わせている人に面会する際、新たな収容者の名前を聞く。収容施設内から有料でかけられる電話を受け、本人の希望で面会することもある。ただ外部から収容者に電話をすることはできない。

 田中さんは面会時、体調や困り事を聞き、メモを取る。これまでに書きためたノートの量は「これぐらい」と両手を上下に30センチほど広げた。

 田中さんによると、居室は6畳ほどの広さが一般的。以前は1部屋に3、4人が暮らしていたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響に伴う仮放免者の増加で、最近はひとり1部屋が多いという。各部屋にテレビはあるものの、田中さんは「話し相手もいない、ほかの人は仮放免で出ていく。残された人はどう思うか」。

 健康管理面でも不安が残る。「痛み止めの薬をお願いしたら、1週間後に来た」。刑務所で服役後、収容されているネパール人男性(43)は記者の面会にそう打ち明けた。