みなさまのお悩みに、脳科学者の中野信子さんがお答えする連載「あなたのお悩み、脳が解決できるかも?」。今回はテレビ朝日アナウンサー・大下容子さんからの人生相談に回答するスペシャル対談をお届けします。(前後編の前編/後編を読む)

大下容子さん

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Q いま51歳。仕事しかやってこなかった人生。自分を変えたいけれど――大下容子 テレビ朝日アナウンサーからの相談

 私はアナウンサー一筋といえば聞こえがいいかもしれませんが、仕事しかやってこないまま今日に至っています。中野さんは脳科学という専門分野でご活躍の一方で、ピアノを弾き、スキューバダイビングを楽しみ、さらに東京藝大の大学院でアートの研究をしています。私もちょっと時間ができたときに今までできなかったことをやってみようと思いました。ところが、ではやってみようということが特にないのです。

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 このままでは人間としての幅があまりにも狭いし、会社員だから定年後のことを考えれば、仕事がなくなってしまったら何をしたらいいのか、今から準備しておいたほうがいいのではないか、と常々思いを巡らすものの結局、何もできずにいます。大きくは変えられないのかもしれないけれど、ちょっとはこんな自分を変えたい……でもなかなか変えられないのです。

これといった趣味もない自分を変えたい

大下 生放送お疲れ様でした。今日は中野さんとの対談を控えていたので、オンエア中からずっと緊張していたんですよ(この対談は2人が出演する『大下容子ワイド!スクランブル』放送終了後に行われた)。

中野 毎朝5時に出社して、2時間35分も立ちっぱなしで番組を回して、大下さんこそ大変お疲れ様でした。

大下 いつも人生相談の回答をなるほどと思いながら読んでいます。私の悩みについてもよろしくお願いします。

 私は一本足打法というか、仕事しかやってこなかったんです。中野さんは脳科学という大きな幹があって、スキューバダイビングやアートなどの枝葉もしっかり育てていらっしゃる。私も見倣わなければと思っています。

中野 どれもこれも趣味の領域を出ていないんですよ。

最新話は発売中の『週刊文春WOMAN vol.13』に掲載。

大下 その趣味さえ私にはないのです。週に6日スポーツジムに通ってはいますが、それは月曜から金曜まで毎日放送する番組に穴を空けないように健康でいなければいけないと思うから。つまり仕事のためです。

 昨年50歳という節目の年を迎え、同期入社の女性の同僚が退職しました。これからは家族や趣味のために時間を使いたいのだそうです。彼女の退職の人事発令に「準定年による」と記されているのを見てハッとしました。

 私は独身でこれといった趣味もない。このままでは、例えば定年で仕事が一段落したら何もやることがなくなってしまう。こんな自分を少し変えたほうがいいのかな、何か見つけなければと思うものの、その体力もないし気力も湧きません。どうしたものでしょう。