本館西側には三菱のマークが壁に残る、レンガ造2階建ての倉庫棟が建っている。本館とともにレンガはドイツから輸入したものといわれており、大正当時の若松がいかに繁栄していたかを物語っている。
その北側には採掘した石炭の成分分析等が行われた、木造平屋建瓦葺の旧分析室が設けられている。
壁には多くのヒビや変色が見られるが、歴史を感じる佇まいにただ古いだけではない建築美を感じる。
圧巻の内観!
扉を開けると、キレイに磨かれた板張りの廊下が奥へと続いている。淡色の壁に年季の入った扉が並び、薄暗く寒々しい雰囲気である。
1階にはビルを管理する上野海運のほか、いくつか会社事務所が入っているようだが、この日は土曜日だったため、人影がなく静まり返っている。唯一、今日の日付を示す日めくりカレンダーだけが、人の存在を知らせていた。
歩くたびにギシギシと音を立てながら階段をのぼる。踊り場で折り返すと、見えてきた光景に息を呑んだ。
「なんだこれは?!」
そこには、1階の様子とはまったくかけ離れた、別世界が広がっていた。
2階と3階の中央部は吹き抜けになっており、鋳鉄製の柱と装飾が施された回廊が周囲を巡っている。ところどころ塗装が剥げている部分もあるが、それさえも味わいに感じてしまう。
吹き抜けから上を見上げれば、格子状の光天井にステンドグラスが嵌め込まれている。柔らかな光が降り注ぐことで、殺風景な内部に華やかな雰囲気を生み出している。
職人のこだわりや、現在の建築にはないデザインディテールに、しばらく立ち尽くし見惚れてしまった。こんな素晴らしい空間を独り占めしているなんて、夢でも見ているようだ。