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建物は事務所・店舗としても利用されていて…

 トイレや湯沸場といった水回りにはタイルが並び、古い書体の文字に、開けるたびガタガタ鳴る扉がよく似合う。歴史を感じながらも美しく保たれ、修繕を繰り返しながら大切に使われているのがよくわかる。

美しく保たれたトイレ
足元のタイルがなんとも可愛らしい

 回廊を何度もぐるぐる歩いていると、話し声が聞こえてくる。2階では革ジャンリペア専門店が営業中だ。上野海運ビルの公式サイトでは、「築100年を過ぎた、しかも文化財に登録されているようなビルに入居できるなんてそうなかなかないですよね。100年の歳月が作り上げた本物のレトロ感は、私が余計なことをしなくても、味のある雰囲気を作り出してくれます」と入居を決めたコメントが紹介されていた。その気持ちはよくわかる。

2階で営業中の革ジャンリペア専門店「IZUMIYA」

 各部屋は雰囲気の良さから、回廊とともに映画やCM撮影のロケ地としてたびたび利用されているようだ。見晴らしのいい部屋、重厚感のあるレトロな部屋、大理石の暖炉がある部屋などそれぞれ違い、どれも個性的でおもしろい。

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訪問時、貸出中だった物件(最新の情報は公式サイトhttps://ueno-building.com/に掲載されている)

 この雰囲気の中で店や事務所を構えられたら、毎日が楽しくなりそうだ。

 階段をのぼり、回廊から吹き抜けを眺めると、2階とはまた違った角度からの光景に心ときめく。光天井のステンドグラスが手の届く距離にあり、デザインの細部までよく見える。

 ビル内部を充分堪能したところで、3階で営業する「Asa café」へ。入り口ののれんが風でひらひらと舞い、早く入りなさいと誘っているようだ。

Asa café外観

 店内にはかたちの違う椅子とテーブルが並び、おしゃれな空間が広がっていた。

「お好きな席へどうぞ」

 どれも違うが、どれも良い。迷った挙げ句やはり特等席であろう窓際の席に決めた。

オーシャンビューの席を選ぶ
心が洗われるような窓からの眺め

 全8種類もあるプレートランチのほか、ドリンクやケーキも楽しめ、瞬時にまた来たいと思わせる居心地の良さだ。窓からは洞海湾が見渡せる最高のロケーション。心地よい風にあたりながら時間を忘れ、行き交う船を眺めていた。