歴史とともに歩んできたレトロな街
夜は宿のそばで、角打ちという文化に触れた。角打ちとは、酒屋で購入した酒を店内の立ち飲みスペースで飲むことだ。諸説あるが、角打ち発祥の地とされる北九州市には角打ちができる店が130軒以上あるという。
細い路地にひっそりと佇む老舗の酒屋へと向かった。外から明るい店内を覗くと、酒屋の中にカウンターがあり、先客が2人いた。ガラガラと音を立てながらガラス戸を開けると、コンクリート敷きの床に、ビールケースがところ狭しと置かれている。壁には新旧さまざまな酒のポスターが貼られ、飲酒の欲求を高めていた。
ここでは店内の冷蔵庫から飲みたいものを勝手に選ぶセルフサービス方式。
ジョッキもキンキンに冷えている。酒は小売価格のため、サービスがある居酒屋やスナックへ行くより安く飲める。酒のアテはカウンターに載っているものや、勝手に運ばれてくるものをくちにした。初心者の私は周りの動向や顔色を窺いながら、マネをするのに必死である。
角打ちは客同士で仲良くなることも多いと聞き、酒好きの友人も酒屋で知り合った人と仲良くなり連絡先を交換したと話していた。私も先客に話しかけ地元の話で盛り上がると意気投合し、またここで会うことを約束したなどと調子よく書きたいところだが実際は酒の力を借りたところで人見知りは解消されず、飲みなれない酒をむりやり胃に流し込むと、肩を落としながら宿に帰っただけであった。
北九州には歴史とともに歩んできたレトロな建物が街中に溢れている。ひとつ見つけると、まだあるのでは?と探したくなり、訪れるたびに新しい出逢いと発見がある。
何十年もの時を刻んできているとはいえ、いつまでもそこにあるわけでもない。それほど遠くない日にまた来ることを誓い帰路についた。
写真提供:あさみん
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