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 また今年1月には、フェイスブックで “外国人労働者が韓国の健康保険制度を食い物にしている” という趣旨の声明文を発表。「(被扶養者を多く登録している外国人加入者のうち)上位10人は(被扶養者を)7~10人も登録している」「外国人健康保険の給付上位10人のうち、8人が中国人」などの数字を挙げ、「国民が40年以上も血と汗を流して作り上げた大切な財産」である健康保険を「不公正」から守らなくてはいけないなどと主張した。

 だが2020年の場合、韓国の外国人労働者の健康保険制度は5715億ウォンの黒字。同年の健康保険全体は3531億ウォンの赤字であり、むしろ恩恵を受けているのは韓国人のほうだ。

 外国人労働者は2019年から健康保険への加入が義務づけられ、保険料の算定基準は韓国人より厳しい。被扶養者の範囲も制限され、労働者1人あたりの被扶養者の数は韓国人の37%にとどまる(2019年)。

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 また中国人が韓国の外国人居住者に占める割合は44%で最多(2020年)。そのうち72%は、韓国人と民族的ルーツを共有する朝鮮系中国人だ。1990年代から韓国の低賃金労働を支えてきた彼らは高齢化率も高く、中国人が給付を多く受けているのは不自然な話ではない。

中国の習近平国家主席 ©新華社/共同通信イメージズ

フェミニズムバッシングで若い男性を取り込み

 ユン氏が選挙キャンペーンで反感を煽ってきたのは、中国や外国人にとどまらない。とりわけ注目されたのは、女性に対する攻撃だ。

 韓国では60代以上がユン氏の保守野党「国民の力」を支持し、40~50代がリベラルな与党「共に民主党」を支持、浮動層である20~30代の動向が選挙の勝敗を決するとされてきた。ユン氏陣営が選んだのは、若い男性を集中して取り込む戦略だ。

 フェミニズムが急速に台頭した韓国では、若い男性の間でアンチフェミニズムの嵐が吹き荒れている。ユン氏が所属する「国民の力」のイ代表は36歳の男性で、 “能力のない女性閣僚のせいで与党は失政を重ねた” といった主張を繰り広げ、SNSを中心に若い男性の人気を集めてきた。

 昨年7月に国民の力に入党したユン氏も、イ氏の主張をそっくり受け入れている。同年8月には、“フェミニズムが健全な男女交際を妨害し、少子化の一因になっている” という趣旨の発言で波紋を呼んだ。