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「ものまねが本物を復活させるって、何なんだよ(笑)」評論家・中野剛志と作家・適菜収が語る、ものまね界の“人間国宝”コロッケの凄さ

『思想の免疫力 賢者はいかにして危機を乗り越えたか』より #2

ものまね芸を「無形文化遺産」で残したい

適菜 美しい話ですね。淡谷のり子のものまねは結構いろんな人がやってます。コロッケもやっているし、ビジーフォーもやっている。ヒップアップって昔いましたね。3人組で。あれが『なんてったってアイドル』を淡谷のり子の衣装でやる。

中野 ああ、そうですか。それ、見たことないな。あとは、本物を見てないのに笑ってしまうというのがあって。

 私はぴんから兄弟を数回くらいしか見たことがないけれど、ノブ(1963-)&フッキー(1966-)のぴんから兄弟を見ると、もうそれにしか見えない。ノブ&フッキーと言えば、古田新太(1965-)の顔まねも、衝撃だった。

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適菜 今のものまね芸のベスト3を挙げるなら、ノブ&フッキーは入りますね。あれは本当に神がかっている。流れもいいし、ネタの幅も広いし、完成度も高い。芸能の王道です。

中野 コロッケはダンスがうまい。すごい訓練している。五木ロボットみたいなのもやるし。ああいうのを見ていると、笑える芸ってやっぱりリズミカルですよね。もう無形文化遺産で残したいです。コロッケなんか、勲章あげてもいいんではないですか。人間国宝に値する。

適菜 本当にそう思います。ミラクルひかるが勝間和代(1968-)のものまねで清水アキラが研ナオコに対してやったことを継承していますね。鼻のところにセロハンテープ貼って。しかも鼻の穴を黒く塗っちゃったりして。

中野 芸人同士で、お互い研究してる感じですよね。ものまね芸人が集まって楽しそうに話してるのを見ると、聞いていて面白い。例えば、「福山雅治(1969-)は皆できちゃうんだよね」とか、「誰々とかまねしたくなる」「そうそう、まねしたくなる」とか。やっぱり同じセンスを彼らは持っているんですね。

適菜 誰かがやると影響されますからね。だから最初にやった人間は偉いんです。二番手だと、コロッケがやるちあきなおみ(1947-)の更にものまねになるようなケースも多い。先に骨格を見抜くと、それがまねされるわけですね。

中野 他のものまね芸人に、自分にできないものまねをやられたり、先に特徴をつかまれたりすると、相当悔しいみたいですね。「やられたと思った」みたいなことを言っていた。

 これはすごい世界だなと思いました。コロッケが先駆者なんでしょうけど、このものまね芸の伝統は途絶えませんね。

前編を読む

思想の免疫力: 賢者はいかにして危機を乗り越えたか

中野剛志 ,適菜収

ベストセラーズ

2021年8月12日 発売

「ものまねが本物を復活させるって、何なんだよ(笑)」評論家・中野剛志と作家・適菜収が語る、ものまね界の“人間国宝”コロッケの凄さ

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