日本ではEVの「エコ性能」が発揮されない?
ところでEV化にともなう電力供給の問題は、当面は決定的な影響を及ぼさないとはいえ、長期的に見れば大きな課題となってくる。
国内にある車両の大多数がEVに置き換わるのは数十年後になるだろうが、これに向け徐々に電力供給のキャパシティを向上させていく必要がある。
議論を呼ぶのが発電方法である。原発再稼働の是非は言わずもがな、「脱炭素」を目指すうえでネックとなるのが火力発電に依存した日本の発電状況だ。
せっかくEV車が「ゼロエミッション(廃棄物を原材料などとして有効活用し、廃棄物を出さない資源循環型のシステム)」であっても、電力の供給過程でCO2を排出していては、EV化の効果も半減してしまう。「テスラ・モデル3」などのエネルギー効率に優れる車種でも、火力発電の比率が7割を超える日本においては、1kmの走行につき60g程度(*1)のCO2を排出することになる。
*1 電気事業者別排出係数の代替値とテスラ・モデル3(RWD)のWLTCモード電費をもとに計算
これはガソリン車が「40km/Lの燃費」で走行するのと同等の排出量だ。エコには違いない。しかし、EVの大容量バッテリーを製造する際に排出される大量のCO2まで考えると、この国におけるEVの環境性能には疑問符がつく。
発電の割合において再生可能エネルギーの構成比が2割程度にとどまる現状、脱炭素社会の実現に向けて、EVを唯一の正解とするのは性急だろう。外部からの電力供給を必要としない燃料電池車などの可能性も視野に入れながら、EVのシェア拡大に向けた発電能力を確保しつつ、再生可能エネルギーへの移行を推進するという多段構えが必要だ。