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原作は木下半太の同名小説だが、堀部は登場人物の背景をより掘り下げて描くようにしたという。とくに内野聖陽が演じた主人公の中年男には、かつて自分が抱いた「いまって人生の消化試合なのか?」という感覚を、冒頭シーンでそのままセリフにして言わせている。
萩本欽一の「教え」
その後は俳優業を中心に活動し、テレビ、映画、舞台を問わず多くの作品に出演を続けている。ここにいたるまでには紆余曲折あったが、芸人や放送作家としての経験は堀部の財産となっている。
放送作家をしていた頃には「知らないから書けませんは絶対に通用しない」と思い、週刊誌や新聞を隅から隅まで読んでは、面白いものを探していた。そこで幅広い知識を得たこと、また物事のポイントをつかむのが得意になったことが、役づくりにも活きているようだ。バラエティの師匠というべき萩本欽一からは、現場で予想外の要求があっても、焦らずに対応することを徹底的に叩き込まれた。おかげで、その後の仕事でも、相手がどう来るか探ったり、相手に乗っかったりと、現場の空気を感じながら演じるのが好きだという(※2)。
『カムカムエヴリバディ』で演じる店主は「けちべえ」「けちえもん」などとあだ名されながらも、代々独特の商売哲学を受け継ぎ、一本筋の通ったところがある。そこに説得力を感じるのも、堀部のこれまでの人生経験がどこかで反映されているからだろう。
※1 『ピクトアップ』2001年4月号
※2 『Cut』2018年2月号
※3 『キネマ旬報』2009年10月下旬号