娘が亡くなったという現実から目を背けてしまう
今回、X中学の校長は「卒業おめでとう」と仏壇の爽彩さんに語り掛けた後、爽彩さんの母にこんな話をしたという。
「校長先生からは『今日が1つの節目となりますが、爽彩ちゃんが卒業したからといって、うちの学校と爽彩ちゃん、お母さまとの縁が切れるわけではありませんので、何でも聞きたいことがあったら、またいつでも連絡をください』と声を掛けていただきました。当初、卒業証書を授与していただけると聞いたときは、正直、複雑な気持ちでした。本人もいないし、自分の中で娘が亡くなったという現実からは目を背けてしまうところがあり、イベントや行事があると、ふと爽彩がいないことを思い出して辛くなってしまうのです。いただいた卒業証書に卒業番号はありませんでしたが、卒業させていただけて先生たちの気持ちはとてもうれしかったです。本当にありがとうございました」(同前)
爽彩さんに卒業証書が授与された経緯についてX中学校に取材すると、教頭が次のように答えた。
「痛ましいことが起きて、弔意を示しご遺族に寄り添い、毎月のお参りをさせていただきたいということから始まりました。爽彩さんは本校の生徒で、ご存命であれば3年生まで本校に在籍して卒業を迎えるというところでしたが、本当に残念な思いですけども、3月を迎えたら証書を読ませていただきたいという思いを1年前からご遺族にお話しさせていただきました。あれから1年が経ち、本当にご冥福を切に願うという気持ちでお参りと卒業証書の授与をさせていただきました。校長が証書を読んでいるときは残念な思いと安らかに眠っていただきたいという気持ちでいっぱいでした」
一方、第三者委員会による調査は教職員、関係生徒、生徒らの聞き取りを終えて、中間報告が数日後に迫っている。爽彩さんが変わり果てた姿で見つかった3月23日から1年。仏壇の横には真新しい卒業証書が手向けられた。爽彩さんを追い詰めたものは何だったのか。仏壇で微笑む愛娘の遺影に向かって、すべてが明らかになった調査結果を爽彩さんの母が報告できる日はくるのだろうか。
◆
3月25日(金)21時~の「文春オンラインTV」では担当記者が本件について詳しく解説する。
その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。