「令状ねえだろ!」

 2021年5月16日未明、渋谷区の路上。「フリースタイルダンジョン」などに出演した人気ラッパー・ACEことマルコス・ビニシウス・ラモス・フィリオ(32)は、4人の警察官に体を地面に押し付けられながら、大声で怒鳴り続けていた――。

ACEことマルコス・ビニシウス・ラモス・フィリオ(31)本人のインスタグラムより

ACEの怒鳴り声はヒートアップしていき……

 現場から近い建物の中にいた記者が異変に気づいたきっかけは、複数の男女の叫び声だった。窓を閉めた屋内まで聞こえてくる「おい」「ふざけんな!」という声。外を見ると道路に金色のロングヘアーの女性が倒れており、ACEがその隣で膝立ち状態で茫然としていた。さらに周囲ではストリート系の服装をしたACEの知人らしき男性2人と女性1人が、立ったままことの成り行きを心配そうに見守っていた。

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 背中に大きな虎がプリントされた「WACKO MARIA」の黒のTシャツに、サイドを刈り上げた特徴的な金髪姿。マスクはせず、首元には金のネックレスが光っている。外見からも叫んでいる声からも、男性がACEだということはすぐに分かった。女性が倒れているのは気になったが、ACEの周りには知人らしき人も何人かいたので窓を閉めて目を離した。

警察に取り囲まれても抵抗を続けるACE、裸足なのがわかる ©️文藝春秋

 しかしACEの怒鳴り声はヒートアップしていく。10分ほど経っても一向に収まらず、さすがに不安になり様子を見に外へ出た。すると現場にはパトカーが4台に警察官10人弱が到着しており、物々しい雰囲気に。そしてACEは、先程女性が倒れていた場所の近くで警察官4人に取り押さえられていた。