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《志村けんさん3回忌》「志村は今、そちらにお邪魔していますか?」愛弟子が“六本木のクラブ”で師匠を探し続けた夜

先行公開『我が師・志村けん 僕が「笑いの王様」から学んだこと』#1

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志村さんがお店にいる間、リムジンの中で待つ

 仕事が終わると、志村さんは食事や飲みに行きます。行き先はたいてい麻布十番か六本木でした。もちろん運転は僕です。

 志村さんがお店にいる間、車の中で待ちます。六本木のクラブに飲みに行くと、お店から出てくるのが夜3時くらい。たとえば夜9時にクラブに入って夜2時くらいまで帰ってこないと、志村さんの行きつけのクラブの何軒かに電話をかけます。

「志村の付き人です。志村は今、そちらにお邪魔していますか?」

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 そう聞くのです。

 なぜか。志村さんはいつもクラブをハシゴしていて、最終的にまったく違う場所で飲み終わるからです。僕は2時あたりからあちこちのクラブに電話をかけ、志村さんの居場所を確認し、近くに車を停めておくのです。

げそ太郎氏は志村さんのリムジンの運転手も務め、「何この車? 大統領でも来てるの?」と声を掛けられたこともあった ※写真はイメージ ©️iStock.com

「今、〇〇にいる。そろそろ帰るよ」

 という連絡が来たとき、そのお店の近くに車を停めておけば、

「すぐ近くにいますので、お好きなタイミングで大丈夫です」

 と答えられます。

休みの日も「買い物に行く」と言われれば駆けつける

 これは「なるべく気持ちよく帰っていただけるように」という配慮ですが、「10分ほどかかります」などと答えたら、またもう1軒どこかに飲みに行ってしまうんじゃないか、という恐怖感もありました(どちらかというと後者のほうが大きかったです)。

 志村さんを自宅まで送ったら、付き人としての僕の一日は終わります。

 休みは原則としてありません。志村さんが休みの日でも「買い物に行きたい」とか「飲みに行く」と言われたら、すぐに駆けつけます。24時間365日、志村さんに合わせた生活サイクルです。

志村けんさん ©️文藝春秋

 僕は当時、志村さんの自宅から自転車で10分ほどのところに住んでいました。アパートの2階の部屋です。

 今しがた書いたように、志村さんが休みの日でもいつ呼ばれるかわかりませんから、アパートで待機します。夜9時になって連絡がなければ、こちらから電話をかけ、「今日は出かけますか」と聞きます。「出かけない」と言われたら、ようやく自分のプライベートタイムになりますが、「まだわからない」と言われることもたまにありました。

 そのまま夜10時くらいまで待機して、「今から出かける」と言われたら、僕は中古で買った5000円の自転車で出かけ、1000万円以上するリムジンを運転して麻布十番や六本木に行き、また5000円の中古自転車に乗ってアパートに帰るのです。