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「ここは日本なのか?」住宅街にいきなり異国の寺、電飾で輝く地蔵菩薩…“ガチ越南”が味わえるベトナムタウンの実態

「ニッポンのベトナム寺」訪問記――関西編

2022/04/05
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 街では他にも、倒産した昭和っぽい喫茶店の店舗に居抜きで入ったらしき、ベトナム人向けのカフェバーを見つけた。こちらでは本場のベトナムコーヒーを飲むことができる。

カフェバーの店内。照明の色が東南アジアっぽい。2021年5月19日。撮影:Soichiro Koriyama
ベトナム食材も売っている。2021年5月19日。撮影:Soichiro Koriyama

 こちらも、お客さんが来るフロアの床に置かれた段ボールのなかに、皮をむかれた小玉のタマネギが大量に入ったままになっているのが、なかなか「ガチ感」を感じられてよい。

姫路の巨大ベトナム寺《兵庫県姫路市:大南寺》

 姫路ではかつて、アジア福祉教育財団の難民事業本部が、日本にやってきたインドシナ難民たちの定住を支援する姫路定住促進センターを運営しており(1979年12月~1996年3月)、難民たちの一部はそのまま市内に居住した。

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 おそらく彼らが母体になり、2013年9月に姫路市四郷町に建立されたのが大南寺だ。郊外にあるので広い土地を確保できたらしく、全国のベトナム寺でも有数の広さを誇る。プレハブ製の庫裏が2棟、さらに本堂の裏には台所もあるようだ。

姫路市の大南寺。郊外の農協の近くに巨大な仏像。2022年3月10日。撮影:Soichiro Koriyama
大南寺。取材時にも在日ベトナム人の女性が祈りをささげていた。2022年3月10日。撮影:Soichiro Koriyama
大南寺。もともと、この場所には地域のお地蔵さんがあったらしい。左手前はベトナム語の絵馬。2022年3月10日。撮影:Soichiro Koriyama

 2022年3月10日に行ってみたときには、大南寺の山内に日本語の上手な若い尼さんがいた。話を聞いてみると京都のある仏教系大学の博士課程に在学中とのこと。埼玉県の大恩寺のタム・チーさんも然り、日本の大正大学や龍谷大学といった仏教系大学は、ベトナムの仏教エリートが目指すべき留学先のひとつであるらしい。

姫路に2軒目のベトナム寺《兵庫県姫路市:福圓寺》

 姫路市にはもうひとつ、花田町に福圓寺(Chùa Phước Viên)というベトナム寺があり、こちらも開山は2013年3月。ただ、大南寺がほぼゼロから新しい建物が建設されているのに対して、福圓寺の庫裏はどうやら一般家屋を改装したもの。本堂だけ新築らしい。