文春オンライン

「ここは日本なのか?」住宅街にいきなり異国の寺、電飾で輝く地蔵菩薩…“ガチ越南”が味わえるベトナムタウンの実態

「ニッポンのベトナム寺」訪問記――関西編

2022/04/05

 現地のベトナムコミュニティの事情に詳しい人から聞いたところでは、往年に姫路市に定住したベトナム難民は、日本人労働者があまり好まないニオイのきつい工場でも我慢して働く人が多かった。彼らは工場でお金を貯め、難民向けにあてがわれていた公団住宅を出て、工場の近くにマイホームを購入。さらにその近くに寺を建てた模様だ。

福圓寺の庫裏。川と山に挟まれた細長い土地に建っている。2022年3月10日。撮影:Soichiro Koriyama
福圓寺の内部。地蔵菩薩に電飾ネオンの後光が射しているのがベトナム式。2022年3月10日。撮影:Soichiro Koriyama

 姫路市のベトナム人の人口は、統計上では3813人(2021年7月1日時点)。ただ、元難民やその子孫は国籍がなかったり日本に帰化したりしているので、実際はベトナム系の住民は4000人を超えている。それでも同じ市にベトナム寺が2つもあるのにはつくづく驚く。

かつて多くのインドシナ難民が暮らした姫路市営勅旨団地付近の公園。現在、団地に住み続けている元難民の家庭はあまり多くない。2022年3月10日。撮影:Soichiro Koriyama

震災、難民、ベトナム寺《兵庫県神戸市長田区:和楽寺》

 阪神大震災の記憶がある現在30代後半以上の人なら、神戸市長田区の地名に聞き覚えがある人もいるだろう。市の西部に位置する人口密度の高い地域で、相対的に経済面で立ち遅れた地域だったことから、耐震基準を満たさない木造家屋が震災によって大量に倒壊したうえ、そこに大規模な火災が広がった。

ADVERTISEMENT

 いっぽう、長田は戦後間もないころから関西有数のコリアンタウンとして知られた……ほか、日本に定住したインドシナ難民が多く移り住んだことでも知られている。先日、私が歩いてみた新長田駅近辺は多国籍タウンと化しており、在日コリアン系の韓国料理店やキムチ販売店、ミャンマー料理店が多数見られたほか、ベトナム料理店もかなり多くみられた。

長田区で見つけたベトナムフォーの店。2022年3月10日。撮影:Soichiro Koriyama
新長田駅付近で見かけた食品加工現場。注意書きの張り紙の言語として、まずベトナム語が書かれているのがおもしろい。2022年3月10日。撮影:Soichiro Koriyama

 ベトナム料理店はオールドカマーの元難民系の店舗と、今世紀になり来日したベトナム人の店舗の双方があるようだ。こうした長田の街のなか、神戸市営地下鉄海岸線の苅藻(かるも)駅、イオン長田南ショッピングセンター近くの住宅街のなかに和楽寺(Chùa Hoà Lạc)はある。