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「私が目指しているのは当然、排外主義なんです」と喧伝する団体も…日本の団地で起きている中国人に対する偏見のリアル

『団地と移民 課題最先端「空間」の闘い』より #1

2022/04/08

genre : ライフ, 社会

 また、団地内にある芝園公民館の職員も「誤解に基づいた偏見が多い」と嘆いた。

「たとえば大小便の問題も、調べてみたら犬の糞だった、ということもありました。ごみ出しなどで、生活習慣の違いなどからトラブルもあったことは事実ですが、中国人だって団地生活が長くなれば、最低限のルールは覚えてくれます」

小さな誤解やトラブルが、住民の間に溝をつくってしまうことも

 前出の中国人住民・曾は、誤解の元となるような行為が、一部の中国人にあることも認めている。

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「少数ではあるけれど、部屋を又貸ししている同胞もいるらしい。そうした部屋に住む中国人は短期間しか滞在しないので、たとえばごみ出しのルールを守らなければいけないといった自覚がない。あるいは、住人の中には子どもの面倒を見てもらうために、中国から親を呼び寄せている人もいます。親の世代は、日本の習慣もわからなければ、そもそも日本語がまったく理解できない。だから、ルールを守らないというよりも、ルールの存在を知らない人もいる。もちろん、これに対して怒っている中国人も多いんです」

 中国には「ごみの分別」という考え方があまり浸透していない。ごみはすべてまとめて袋に入れて出すものだと考えている人も少なくないのだ。

 小さな誤解やトラブルが、団地住民の間に溝をつくってしまうこともある。

©iStock.com

世代間のギャップによる問題

「本当の問題は、日本人も中国人も、互いの存在に無関心であることではないのか」

 当時、私にそう告げたのは団地内に店を構える日本人の商店主だった。

「人種間というよりは、世代間のギャップなんですよ。高齢者ばかりの日本人と、働き盛りの中国人では、どうしたって交流の機会が少なくなる。接触がなければ相互理解だって進まない」

 なにかのはずみで、無関心は容易に憎悪や不寛容に変化する。

 差別は、そうした場所に入り込む。憎悪を煽り、亀裂を持ち込む。

 ただでさえ交わることの少ない高齢者と若年層の間に、人種や国籍といった材料が加わり、余計に溝を深くする。敵か味方か。人を判断する材料がその二つしかなくなる。

 団地はときに、排外主義の最前線となる。

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