ヒールの歴史を断つ使者こそが平沢大河
2015年にドラフト1位でマリーンズに入団した平沢大河は、2008年に高校生と大学生・社会人のドラフトが統合されて以降マリーンズで初となる高卒ドラ1だ。即戦力になる大卒ドラ1、社会人ドラ1たちを否定するわけじゃもちろんないけど、甲子園のスターがマリーンズにやってくることになったワクワク感はもう、それまで体験したことがない感情だった。
指名当時こそ平沢大河の地元球団である東北楽天ゴールデンイーグルスと競合となり、抽選で交渉権を獲得したときは相変わらずチームのヒール感が際立ったが、いざ1年目のシーズンが始まるとキャンプやオープン戦から初々しくもキラキラとしたオーラを放ちっぱなし。そのまばゆさは一瞬にしてドラフトでの“強奪感”を薄れさせるものだった。
エラーも三振も多いけど、ひとつひとつのプレーに華があるその姿はスターそのもの。まだダイヤの原石かもしれないけど、今までのマリーンズになかった正統派スター誕生の予感に、いまだかつてないほど心が躍った記憶をずっと忘れることができないのだ。そして同じ感情を抱いているファンが多いことは、平沢大河がZOZOマリンのバッターボックスに立つたびに送られる拍手の大きさが証明しているはず。
平沢大河は1年目から着実に出場機会を増やし、3年目の2018年には112試合に出場するなど、順調に成長を重ねてきたように見えたが、それ以降は故障もあって少し遠回りしてしまったかもしれない。だがその間にマリーンズはドラフト戦略を高校生中心の路線にシフトチェンジ。2017年の安田尚憲、2018年の藤原恭大、2019年の佐々木朗希、2021年の松川虎生という夢とロマンしかない正統派スター候補生が続々と入団し、それぞれが頭角を現し始めている。
真のヒーローは遅れてやってくるもの。漫画『ドラゴンボール』で地球がサイヤ人の襲来を受けているときも、界王星で修行していた孫悟空は遅れてやってきたし、『ピンポン』のペコも1年のブランクを経てから才能を開花させたじゃないか。
ヒールから脱却するためのパーティーが揃い始めた今、頂点をつかみ取るそのときにはやっぱり平沢大河がその中心にいるべきだし、そこに平沢大河がいることでマリーンズのヒールの歴史が美しく完結すると、僕は信じてやまないのだ。
念願のショートでレギュラーを掴むのか、はたまたサードかセカンドか。もしくはかつてセンスと適応力の高さを見せつけた外野なのか。打順も上位打線か、クリーンナップか、それとも上位に繋ぐ下位打線か。
その役割はまだハッキリとは見えないけど、きっと今シーズンは持ち前の選球眼で際どい球を見極めながら甘い球を呼び込み、パーフェクトスイングで華麗に仕留めたり、はたまた四球を選んでチャンスを広げたり、チームに貢献する姿をたくさん見せてくれるはずだ。ここまではバントの失敗が目立つけど、パワプロでは「バント○」がついてるし、きっと今後は大丈夫。
頑張れ、平沢大河。マリーンズファンはみんな待っている。苦汁をベロベロとなめ回した時間はきっと報われる。今年の最後は炭酸入りの苦い麦汁をなめまわそうぜ。
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