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「日本人らしさ」を消さなければならない

――NFLチアになる「大変さ」、詳しくお聞きしたいです。

山口 まあ正直、全部なんですけど(笑)、まず、日本人らしさを消さないといけないんです。

 アメリカの方たちって、自分を表現するのがめちゃくちゃうまくて。たとえば自撮りってちょっと恥ずかしいじゃないですか。でも彼女たちは瞬時にキメ顔ができちゃうんですね。

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 ダンスがそんなに上手じゃなくても選考に勝ち進む子がいる一方、チアやダンスの経験があるにもかかわらず惨敗。でも、当時は自分のどこがダメなのかわからなくて、1度目の挑戦は何もわからないままあっけなく終わってしまいました。

――今なら、当時の自分のどこがダメだったのかわかりますか。

山口 言語化するのが難しいんですけど、受かる子って、パッと目を引くものがあって。それをオーディションの場で一瞬で出すわけですけど、その自己PRがアメリカ人は本当に上手なんです。全身で「私を見て!」と表現できるんですね。

山口紗貴子さん(本人提供)

――たしかに日本人らしい「遠慮」や「謙虚」が要らない世界ですね。その他にも、山口さんがNFLのチアになるために消した「日本人らしさ」にはどんなものがありますか。

山口 筋肉の付け方も違います。細さというより、メリハリのある健康的な体型が求められますし、ダンスも力強いものが好まれます。当時は、ネットでNFLチアの情報を今ほどには得ることができなかったので、NFLでの経験がある先生を探しては、アメリカ流のダンスを教わったり。

 あと、日本だと「すっぴん風メイク」がかわいいとされていますが、アメリカ人がメイクに求める美しさは全然違って、メリハリがハッキリしているものなんですよね。顔に陰影をつける「コントゥア」をしっかりやるんですが、完成前の顔はデーモン閣下みたいな感じ(笑)。

 あまりにそれまでのやり方と違うので、最初はヘアメイクだけで2時間かかるくらい大変でした。

――たとえば「多様性」の観点から、日本人らしさを求められることもあるのでしょうか。

山口 日本人がいる、ということだけでもう多様性なんです。その他の面では、バーっと一列に並んだときに他のメンバーから浮かないよう、テイストの統一感が求められます。