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その後も、「あなたの声は波形で見ています(※)から、波形とずれたらダメなんです」とか「一文をそのまま使うことはありません。全部、料金/は/ゴヒャク/ジュウ/円/ です/のように切って、別のテイクとバラバラに組み合わせて使うので感情を入れても無駄なんです」とか「ジュウエン(10円)のウを聞こえるように」とか15、16と後に数字が続くようなイントネーションで「ジュウ」を録ったりとか、今まで経験したことのない、気の遠くなるような収録が続いて、やっと私のETCは完成を迎えた。
完成品を車に取り付けてもらい、走りながら音声を聞くと、あのとき言われたことはこういうことだったんだと初めて気づくこともあり、その後何度も追加音声の収録があったが、収録のたびに少しずつスムーズに録れるようになっていった。
こうして私は苦労の甲斐あって、『機械音声』というスキルを身につけた。
※ 声の大きさ・高さ・長さなどの数値を測り、音の変化を波形グラフとして表示してコンピュータ上でチェックしているということ。