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2022/04/27

ヒットを打つために大切な3つのもの

 開幕から苦しんだ2人には声を掛けた。「神宮で京田(陽太)が打撃練習を終えてロッカーに戻ってきたら、顔面蒼白でした。悪い癖はかかと重心になって腰が抜けること。それを矯正する構えの話をしました」。京田はその夜、2打席連続ホームランを放った。「彼は繊細なので、技術的なことを丁寧に伝える方がいい。逆に木下(拓哉)は毎日いじってましたよ。お前、いつ開幕するんだって。『今日! 今日こそ打ちます!』と言っていました。あいつは1本出れば、大丈夫だと思っていました」

 若手も勝利に欠かせない。彼らに対して大島は「手本にならないと。重要なのはいかに調子の悪い時に打つかです」と断言した。そこで2つ聞いた。まずは「ヒットを打つために大切なものを3つ挙げるとしたら?」という質問だ。

「タイミングを取る、ストライクを振る、思い切りです。タイミングの基本は始動を早くすること。でも、誰とは言えませんが、中には早過ぎると、体が前に出されるピッチャーがいます。そこの見極めですね。あとは自分の打てる球を振って、ファウルにせず、一発で仕留めること。そのための練習は素振りです。自主トレやキャンプでは毎日最後に早振りを10本10セットして終わっています。思い切りとは配球の読み。これは企業秘密です」

 次に不調時の対処法だ。「不調の原因が何かを探ることですね。僕の場合は、体、気持ち、頭の3つ。体とは疲れです。やはりケアの時間を長く取ります。『打てる気せんわ』と気持ちが落ちる日もあります。その時はとことん考える。考えまくって、弱気な自分と向き合って『明日はこれを試そう』と答えを出して、最終的には『何とかなるでしょ』と開き直る。メンタルトレーナーはいません。自分で解決します。頭はまた配球の話。全打席の映像とデータを見直して、このまま行くか、変えるかを判断します」

 殊勲打の感想は淡白なのに、技術論や不調原因の分析は濃厚だった。事が起きた後はあっさりで、起きる前は思慮深い。言えることは明かし、言えないことは伏せる。時にヒーロー、時に進行役、時にアドバイザーになる。大島に泣かせる美談も派手なパフォーマンスもない。ただ、ひたすら勝利のために仕事をする。若手の活躍は「希望」だが、大島のそれはまるで「義務」のようだ。この姿こそ「プロ野球のキャプテン」なのかもしれない。

「最後までしびれる試合がしたいですね」。これから勝利を重ねれば、秋にはきっと竜が一つになっている。その輪の中に大島プロがいる。11年ぶりの優勝。その時、泣かせてもらおう。

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