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2022年のファイターズって? たとえば「上野響平」です

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/05/01

 4月26日の夜、「プロ野球ニュース」を楽しみに待っていました。といってもこの日の対バファローズ戦、ファイターズが勝った訳ではありません。最初リードしていたのを追いつかれて延長戦で負けるという、負け方のパターンの中では割とくやしい方に入る結果でありました。それで一体何が楽しみだったのかというと、「今日のファインプレー」のコーナーです。

 自分の観ていた試合だけでこれは「今日のファインプレー」確実と思っても、必ずそうなるとは限りません。その日の全試合から厳選したいくつかだけが放送される訳で、期待していても空振りだったことは結構あります。しかしこの日ばかりは絶対の自信がありました。雨天中止2試合で、4試合から選ぶファインプレー。そこから漏れる筈がない……あ、ほら、やっぱりだ!

 上野響平、2連発!

上野響平

 と、いきなり名前を出しても「えっそれは誰?」となりますよね。すみません、この日のファイターズのショートです。2001年4月26日生まれの高卒入団3年目。そう、ちょうど誕生日で21歳になったのでした。バースデーヒットはなりませんでしたが、バースデー好守備の連続だったのです。

 ひとくちにショートの好守備と言っても色々ありますが、彼の場合に特に目を引くのは「球際の強さ」と「送球」でしょうか。打球が飛んだ瞬間には、あっやられた、抜けたと思ったものを捕っている、だけではなくてすぐ投げる。本当にすぐ投げるんです。ボールを握り直したりしない。更にその動作の素早さだけでなく、送球それ自体も速くて正確。強肩なのですね。捕って投げる、その一連の動きが、「上手い」というより「目覚ましい」のです。

 と言うといくら何でも大袈裟だと思われるでしょうか。何といってもまだプロ3年目に突入したばかりです。1年目は1軍出場なし、2年目の去年は4月に1軍初出場を果たしましたが、結局4試合のみでした。という過去2年間に比べると今シーズンは晴れて1軍定着したかに見えますが、まだ出場10試合です。石井一成の半分にも届きません。

 しかもその石井一成、今年は結構打つんです。ここまで25試合に出て15打点。昨シーズンまるごと全部でやっと19打点だった人がですよ。何しろ長打が増えました。スリーベースとホームラン、どちらも去年4本打ったのが最高の成績でしたが、今年はもう3本ずつ打ってます。

 そしてこの人も忘れちゃいけない、中島卓也も1軍に戻ってきました。彼は昔も今も「打てるショート」には程遠い訳ですが、ファウル打ちが得意な曲者として名をはせた実績があります。

どこまでも守備の人 上野響平の魅力

 さて若造・上野響平。これら先輩達のような、打撃でのセールスポイントはまだありません。というか単純に、打ててない。

 4月8日の対イーグルス戦でプロ初安打となるツーベース、2日後の同じカードで2本目のヒットを打ちましたが、それきりです。その後6試合で16回打席に立ち、送りバント2回とフォアボール1回の他は凡退でした。2軍でも1年目が打率.174、2年目が.209という成績だったので、まだ1軍の投手に不慣れだからというのを差っ引いても、「打てるショート」を彼に期待するのは、少なくとも今の時点ではまず無理と思ってよさそうです。

 ドラフト候補としてこの選手は打撃がいいと言われていてさえも、プロ入り後に誰もがすぐ打てるようになる訳でもないのはよく見かけるところ。ましてや上野響平の場合、そもそも最初から、打撃の方はほとんど何も言われていないようなものなんですね。しかし守備の評価は違う。「野球太郎」誌の「2019ドラフト直前大特集号」を見ると、《ハイレベルな守備》《高い守備力を誇る》《守備で客を呼べるような選手に》等々の言葉が並び、とどめに《プレーヤータイプ/小柄な金子誠》とくるんです。これはファイターズファンにはたまらない。

 この本の「ドラフト候補&指導者マンツーマン・インタビュー」という企画、今読むと宮城大弥や石川昂弥や紅林弘太郎がいて非常に面白いのですが、京都国際高校・上野響平と小牧憲継監督のところを読んでみましょう。《守備への意識を持ち始めたのは小学生の頃からです。》とは本人の弁。中学時代の彼について、監督は《試合前ノックのボール回しを1球見ただけで「コイツだ!」と思いました。》と、2人ともほぼ守備の話しかしていません。プロ入り後の将来展望も、本人は《ゴールデン・グラブ賞を取れる選手になりたいです。》と言い、監督は《「上野の守備を見たいから、お金を払って見に来た」と言ってもらえるように》と、どこまでも守備の人なのでした。本人の自負も、周囲の評価も。