「車の進行方向を向いた画にしたかったんですけど、公式のデザインにはちょうどいいものがなくて。全部イラストレーターさんに描きおろしてもらっています。リアのこのポーズも、車がV8エンジンを積んでるので、『V8を称えよ』っていうポーズにしてもらって。もともと、これがやりたくてV8の車を買ったんですよ」
なるほど見てみると、重ね合わせた両手の指がV8エンジンの形になっている。こうしたこだわりを表現するために、わざわざ超高級車を購入し、オリジナルの構図やポーズをオーダーしたわけである。ただならぬキャラクター愛だが、躊躇はないのだろうか。
「もう14年くらいやってますからね。当時はまだ痛車って言葉もなくて、業者さんもあんまりなかった時代で。自分でプリントしたものを貼ったりしていたんですけど、やっぱりすぐ変色しちゃって、3ヶ月ごとに貼り替えたりしてましたね」
その語り口からは、「キャラクターへの愛情を車で表現する」ことが彼にとってごく自然な営みであることがわかる。そこにあるのは極めてシンプルな「好きだから」という行動原理であるように見受けられた。
しかしそうは言っても、日常生活に支障が出ることはないのだろうか。
「会社からは特に何も言われませんね。今この車では通ってないですけど、これの前にはエボ10とかM3とかの痛車で通勤していて、それで何かあったっていうのはないです。家族からも文句は言われません」
仕事は製本関係の会社員だというが、シンプルに「好き」を追求する姿勢に、周囲もおのずとそれを受け入れているのかもしれない。
観賞用の「痛車フェラーリ」
会場を進むと、遠くからでも一目でわかる、スーパーカーの低く幅広なシルエットが。フェラーリ・360モデナだ。ボンネット一面に、ウマ娘のキャラクターがプリントされている。「痛車フェラーリ」の異質な存在感に、通りすがりの外国人YouTuberが興奮気味に“Ferrari”を連呼していた。
オーナーを探すと、少し離れたところで談笑する二人組が。おそらくそうだろうと話しかけると、一方の男性が謙遜しながら名乗り出てくれた。フェラーリ購入からカスタムまでのいきさつを聞いてみる。