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車両の解体は「重機でガシャン」ではなく「手作業」!? 車好きでもほとんど知らない“自動車解体”の現場に潜入してみた

自動車解体の知られざる世界 #1

2022/02/19

 たんなる工業製品だとわかっていても、愛車との別れは寂しいものだ。さまざまな思い出を共にした車を手放す際に、感傷的な気分になることもあるだろう。

 しかし、車が「その後どこに行くのか」にまで思いを巡らせる人は少ないかもしれない。何人かのオーナーのもとを転々とし、故障や事故で役割を終え――その後は? スクラップになり、廃棄物として処理されるのだろうか。

 一般に、「車が最後に行き着くところ」と考えられているのは、「解体屋」すなわち自動車解体業者である。ボロボロの車がうずたかく積み上げられた、「墓場」のようなイメージを抱いている人も多いのではないか。

 けれども実際のところ、解体業者が担うのは「スクラップの廃棄」ではない。そこで行われているのは、機能を失った車体を新たな用途に向けて「再生」するための分解作業なのである。

ダッシュボード周りを一挙に取り外す。この箇所に取りかかってから10分もかかっていない

 我々は今回、解体現場や、車体が分解された後のプロセスについて知るべく、都内で自動車解体・中古部品販売を営む企業を取材した。

「壊し屋」と「部品屋」

「車の解体」といってまず思い浮かぶのは、車を重機でガシャンと破壊し、スクラップにする光景だろうか。時折目にする「家屋解体」のイメージもあり、パワーショベルやプレス機で、次々に車を押しつぶしていく豪快な作業が浮かぶ。

 もちろんそれも自動車解体業の一側面だが、実のところその業態は一様ではない。取材先企業の代表は次のように語る。

「解体屋には、大きく2つの種類があります。1つはどんどん車を壊していって、再資源化することを専門にする、いわゆる『壊し屋』ですね。もう1つは、解体の際に売りに出せる部品を回収して、中古パーツといった形で販売する『部品屋』です」

かつての高級車も等しく資源になっていく

 ここでいう「壊し屋」は、スクラップになった車体(廃車ガラ)を「資源」として破砕業者などに引き取ってもらうことが事業の軸となる。ガラの状態でも、鉄やアルミといった金属類には値段がつくし、法律上の指定品目を処理する際にはリサイクル預託金が充当される。

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