とはいえ、一台の車体を再資源化することによって引き出せる利益は限られているようだ。
「昔に比べて解体業者そのものも減っていて、今でも『壊し屋』だけでやっているのは、流れで解体できる設備を持った大企業か、あるいはコストのかからない個人経営のような企業だけになっている印象です」(同前)
つまり現在では、多くの解体業者が「部品屋」として経営を成り立たせていることになる。部品屋も車体の再資源化は行うが、その際取り出した部品を付加価値のついた状態のまま、板金・整備工場などに販売することで利益をあげる。
生物の死骸が食物連鎖のサイクルに還っていくように、解体された車体は資源として諸産業の生産過程へと還元される。一方、部品屋の扱う領域はいわば臓器提供であり、不具合を抱えている別の車両の一部として流用するわけである。
1人の職人が「手作業」で解体
それでは実際に、廃車となった車両はどのように分解されていくのか。単に解体する場合にも、部品取りをする場合にも、まずはフロン類やエアバッグ類といった法律上の指定品目を取り除き、適切なルートで処分する必要がある。
「最近の車は軽でもエアバッグが10個とかついていたりするから、そこは少し大変ですね。それでも国産車であれば1つ1つは簡単に取り外せるんですが、外車は部品の規格が違ったりして時間がかかります」
解体作業を担当する従業員はそのように語る。重機を中心に解体を進める事業者も多いが、この会社では1人の職人が手作業で1台まるごと解体してしまう。売りに出す部品を取り外す際、傷がつかないようにしているのである。