解体にかかる時間は、軽自動車で2時間程度。輸入車の場合は半日ほどかかるケースもあるという。作業を見ていると、動きは悠然としているのに、おそろしいくらいに手際がよく、あっという間に車が分解されていく。
重機で解体するのと違い、手作業の場合にはネジやナット類を外す作業が必要になる。この際「どこを外せばどのブロックが外れるか」を把握していなければ、流れが滞ってしまうだろう。作業員はそうした迷いを一切見せることなく作業を進めていった。無数の部品からなる車体の構造を、すべて理解しているかのようである。
解体の手順は車種によってさまざまだが、法律上の指定品目のほか、再販のため確保する部品をまず取り外す。その後、内装を分解し、足回りやエンジンなどの機関を下ろしていく流れである。
車両全体のリサイクル率は99%
解体業者は車体処理の最終地点ではなく、部品を取り除かれた車体は破砕業者などの手に渡り、金属やASR(自動車粉砕残さ)へと分別される。鉄やアルミのほか、配線に用いられる銅線など、車体の大部分が資源として再利用される。
車体を構成する部品には一見、再利用できないものが多くあるように思われるが、実際にはほぼすべての部分がリサイクルに回されている。
2005年から施行された自動車リサイクル法においては、環境に負荷を与えるフロン類、処分時に爆発の危険があるエアバッグ類、不法投棄の原因となりやすいASRの3つが「指定品目」として位置づけられ、処分ルートも厳密に管理される。
樹脂や発泡ウレタン、ゴムなどからなるASRは、2005年以前はリサイクル率が70%に満たなかったが、2020年度のデータでは約96%がリサイクルされている(*1)。エアバッグも同様に、95%程度がリサイクルされており、全体としては車体の約99%(重量比)が再利用されるという(*2)。
*1 経済産業省・環境省「自動車リサイクルの現状」より
*2 公益財団法人自動車リサイクル促進センター発表より