「自動車解体」という業種は、世間的には「廃車をスクラップにして処分するところ」というイメージが定着している。

 一見、そこは「自動車のライフサイクルの終点」のように思えるが、実際には解体業者が行う分解作業を通じて、役割を終えた車体は新たなサイクルのうちで再利用されていくのである。

 鉄やアルミ、銅やレアメタルというように、単に「資源」として見た場合にも、自動車は有用な素材に満ちた「宝の山」である。とはいえ解体した車体を再資源化するだけでは、ビジネスとして成り立たせるのは難しい。

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取り外された外装パーツ。ここから研磨・洗浄され、出荷できる状態にしていく

 多くの解体業者にとって経営の軸となるのが、解体時に取り出した「中古部品の販売」である。一般のユーザーにはあまり馴染みのない中古部品だが、それらはどのように市場に流通し、どれほどの品質を担保されているのか。都内で解体業を営む企業に話を聞いた。

「もったいない事故車」が部品屋の生命線

 解体業者に入庫する車両はさまざまだが、古くなり車検に通らなくなった車や、事故などで廃車扱いとなった車が多くを占める。このなかでもとくに、「比較的新しく、まだ十分に直せるが、一部の不具合により修理を諦められた車」が部品取りの対象となる。

「部品を売ることを考えると、やはり使い切った車からは部品は取れませんから、資源として処理するだけになってしまいます。生命線になるのはオークションや損保会社から入ってくる比較的新しい車両ですね。生きた部分の多い車をどれだけ仕入れられるか、というのがまず大切です」(解体業者代表)

 安全装備が充実した近年の車種では、車体の損傷が少ない事故であっても、複数のエアバッグが展開し、修理費が膨大な額になるケースが見られるという。損害保険の契約上、修理費が車両の時価額を超えてしまえば、修理可能な状態でも「全損」として扱われるから、「エンジンなどの機関は新車同然なのに廃車」といった状況もありうるわけである。