1ページ目から読む
4/5ページ目

「保険修理」で中古部品は選ばれない

 さらに、中古部品の積極的な利用は、修理費を抑えるだけでなく、環境負荷の観点からも少なからぬ意義を持つ。

「一般社団法人 日本自動車リサイクル部品協議会」が発表しているデータ(Ver.2006) によれば、2010年式・1800ccのセダンを修理する場合、たとえばエンジンユニット全体を中古部品とすることで、新品に比べて「681.3kg」のCO2を削減できるという。片側のフロントドアユニットだけでも「157.4kg」が削減できるとされており、板金・整備業界における流通経路の整備・拡大が求められる。

 とはいえ実際のところ、中古部品で事足りる状況であっても、やはり新品の方が優先的に利用される傾向にあるようだ。首都圏の整備工場の代表は次のように言う。

ADVERTISEMENT

倉庫に保管されるトランスミッション

「自費で修理する場合には、中古パーツを使うことで安く直せるので、お客様側にもメリットがあります。ただ、保険で直す場合には基本的に新品パーツを使うことになります。わざわざお客様の方から『中古を使ってほしい』というのは考えにくいですし……」

 確かに、顧客に対して「環境負荷」という視点を持ちだしても、なかなか理解は得られないだろう。そもそも自動車のパーツに「中古品」や「リビルト品」があることを知らないユーザーも多く、ゼロから信頼を得ることは難しい。

「一部の保険会社では、修理の際に中古パーツを利用することに同意することで、車両保険料が割り引かれる制度があります。これならユーザー側にもメリットが生まれるので、より広まってほしいですね」(同前)

 この制度は「リサイクルパーツ特約」などと呼ばれるが、実際に導入している保険会社は限られている。契約の際にあらかじめ、中古部品を修理に使用することを認めることで、車両保険の数パーセントが割り引かれる。なお、保安部品や消耗品には新品が用いられる契約だ。

 ただし、値引きの対象となるのは保険料のうち「車両保険」の部分だけなので、大幅な負担減とはなりにくいだろう。