「ザクにしたくてこの車に」
会場の端に、ボンネットの先端に「ツノ」を生やした赤いS2000の姿が。アニメに明るくない筆者でも、一目で「シャア専用ザクだ!」とテンションが上がる。
しかしオーナーの「hashiaki8」氏に話を聞くと、これはシャア専用ザクではなく「ジョニー・ライデン専用ザク」なのだという。なんでも色味や細部が微妙に異なるらしい。知らない分野に安易に口を突っ込むものではないと自らを恥じる。
まず目を引くのが、バンパー中央に設置された円状の赤いライトである。可動式であり、開口部のなかで左右に動く。ザクの「モノアイ」を再現しているのだ。
「これがやりたくて、この車にしたんですよ。形を見て、『これならザクにできる』と思って」
クオリティの高いカスタムに見えるが、ショップに依頼はせず、自分の手で仕上げているのだとか。
「カッティングとかも自分で作って貼ってて、かかるのは材料費くらいなので、外は全部で10万円いってないと思います。このモノアイも5000円くらいで作ってますし。ホームセンターとヤフオクとアマゾンで大体調べて揃えちゃいますね」
あえて経年の趣を表現した塗装も、自分自身で仕上げたものだ。
「1回サーキットでぶつけちゃって、傷を隠すのに『じゃあ汚してみよう』と思って、どうせなら全面的にやっちゃおうと。プラモデルの作例とか一生懸命調べて、『こういう汚し方がカッコいいな』みたいなのを見ながら仕上げました」
自宅にガレージ環境も整えているので、諸々の改造も日常的な趣味になっているようだ。
「街では子どもやオジサンによく話しかけられます。子どもはじーっと、動いているのを見ていたりして。やっぱそういうの見ると嬉しいですね、『なんか面白いな』って思ってくれるならそれだけでやった甲斐があります」
「痛車オーナー」と聞くと、何か特殊なメンタリティを持った人物像がイメージされるかもしれない。けれども取材のなかで感じられたのは、「どのオーナーも世間の目を気にすることなく、純粋に好きなものを楽しんでいる」ということだった。
「なぜ痛車を」という問いに対しては、「好きだから」としか答えようがない。シンプルに、「車が好き」「作品・キャラクターが好き」という気持ちを追求した結果として、痛車カスタムという文化があるのである。
