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人身事故の約6割は「自殺」ではない

――タクシーだと酔っ払って寝てる人にも触れてはいけない、みたいなルールがあると聞きますが、東京メトロにそういったルールは?

鈴木 僕が働いていた時は「触れちゃダメ」みたいなルールはなかったです。基本的に酔っ払って寝ている人はお声がけして起こすんですが、どうしても起きない時は電車の外に担いでいくこともありましたね(笑)。もちろん乱暴な起こし方はしませんが。あと女性を起こす際は触れる場所に気を付けるようにしてました。

 

――酔っ払った乗客は多いですか。

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鈴木 かなり多いです。東京メトロの場合、人身事故で亡くなっている方の約6割は酔っ払いの方なんです。それはデータでも出ています。

 なので、ホームに酔っ払ってる方がいたら駅員同士で声をかけて、見回りに行ってました。僕が働いていた駅は、東京メトロ全179駅の中でも乗降者数が多いほうだったというのもあって、夜になると特に酔っ払ってる方が多かった気がします。夜はずっとホームを巡回していることもあるくらいでした。

 勤務中に休憩時間になったとしても、駅長から「ごめん鈴木、ちょっと酔っ払いが多いから、ホームに見に行ってくれない?」と言われることも多かったです。そこまでしないといけないくらい、酔っ払った方の人身事故が多いんですよ。

 

――不慮の事故による人身事故が多いと。

鈴木 そうです。約6割の方は、自殺しようとして線路に飛び込んだわけじゃなく、誤って線路に落ちて亡くなっているんです。これって結構、衝撃的な数字ですよね。

 でも、自殺であろうと酔っぱらって線路に落ちてしまっただけであろうと、人身事故が起きると遺族の方々に多額の損害賠償金が請求されてしまうこともある……本当に心苦しいんですけどね。

写真=山元茂樹/文藝春秋

2回目に続く

駅員が一番腹立つ瞬間。

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