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お客様に「できないことはできない」と伝えると?

――そんなことを言う人が本当にいるんですね。

鈴木 本当にいろんな方がいましたよ。僕が働いていた駅の周辺に住んでいる方はお金持ちが多かったんですが、電車が遅延すると「私の子どもが塾に遅れたらどうしてくれるの?」と詰め寄ってくる親御さんも結構いましたね。

――そういった“クレーマー”の方々には、どのように対応していたのでしょうか。

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鈴木 駅員になったばかりの頃はずっと謝ってたんですけど、謝り続けているだけだとキリがないんですよね。それに気づいてからは、「できないことはできない」という駅側の主張をしっかり伝えるようにしていました。当時の駅長からも「言いたいことは言うように」と教えられたので。

 

 そうするとクレーマーの方々も意外とひるむというか、「じゃあわかったよ」と諦めてくれるんです。日本は“お客様は神様”みたいな文化がありますけど、お客様の主張が間違っているときは、堂々とその主張を跳ね返していいんだというのは学びました。

――もちろん、クレーマーの方々はかなりの少数派ですよね?

鈴木 もちろんです。基本的には皆さん、駅や電車のルールを守っていますし、中には駅員に対して凄く協力的な方もいます。

 例えばホームで急病人が出たときに、手を差し伸べて介抱してくれるサラリーマンの方がかなり多くて。「大丈夫ですか?」って言いながら急病人の肩をかついで、事務室まで一緒に連れて行ってくれたりとか。

 こちらがお礼を伝えると「とんでもない、お礼なんていらないです」と言って去っていくんです。僕はその後ろ姿を見ながら、「かっこいい。男の鑑だな」と思っていました(笑)。

 

――逆に、お客様に対して「こういう対応は絶対にやっちゃダメ」みたいなルールはあったんですか?

鈴木 そこまで厳格なルールはなかったです。乗車料金をしっかり把握するとか、乗り越し精算の時におつりを間違えないようにするとか、そういった基本的なルールはありましたけど。