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赤螺家の男はなぜモテるのか?

――赤螺家は3世代全員、美女を射止めています。吉兵衛が清子(松原智恵子)、吉右衛門は初美(宮嶋麻衣)、吉之丞は小夜子(新川優愛)。赤螺家の男はなぜモテるのでしょうか?

「どうなんでしょうね。最初藤本有紀さんの台本でいただいていた赤螺家はケチがキャラクターです。藤本さんは落語に相当造詣が深い方で、赤螺屋吝兵衛(あかにしやけちべえ)というケチな人物が出てくる『片棒』という話があります。だから赤螺と言えば、ケチというのは、落語好きな人はピンとくる。だから、モテるという要素はそこにあるかどうか……。

 でも、小夜ちゃんと吉之丞という組み合わせは面白かったですよね。それで桃太郎が失恋するというのも含め、色んな話のうねりがすごかった。あの2人の関係も、大月家に吉之丞がテレビを直しに行って、そこに居た小夜ちゃんが『うちのエアコンが』と言って、吉之丞が『わかった、じゃあ見に行ってあげる』というくだりから始まっていますよね。でも、そうか、赤螺家、モテるのかぁ……」

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美女を射止め続けた赤螺家(写真/NHK公式インスタグラムより)

――小夜ちゃんを演じた新川さんは「家族思いで仕事に誠実だからでは」と。

「僕の中では吉兵衛、吉右衛門と来て、それが“けちべえ”、“けちえもん”になって、今度は“けちのじょう”になると思っていたら、意外と吉之丞のケチエピソードはないんですよね。商店街の会長を任されるくらいだから、キャラクターはともかく、一応近所の人の信用みたいなのはあるのかも」

小夜子と吉之丞の結婚はまさかの2人と話題に(写真/NHK公式インスタグラムより)

――藤本さんの脚本は、伏線回収が話題になりました。

「僕は藤本さんの脚本は、大河の『平清盛』以来なんですけど、本当に細部まで描いていらっしゃる。無駄なキャラクターは1人もいない。見事に伏線を回収し切っています。それまで人が住んでいたとは思えないくらいまで、ピカピカにして家を出て行ったみたいな感覚です。

 清盛の打ち上げで藤本さんにご挨拶した時、本当は僕がやっていた藤原忠通という人はもっと早くいなくなるはずだったんですが、キャラクターが強烈でどうしても残したくて、中盤の最後のほうまで残したという話をされていた。だから、必ずしも最初からこうと決めた線があるわけではなく、大きな方向性だけはあって、その中でキャラクターの“出し引き”をしていらっしゃるのかなと。僕が藤本さんとお会いしたのはその1回だけです。でも、その忠通のお話をうかがって、本当に嬉しかった。清盛も2011年の撮影、2012年の放送なんで、もう10年前なんですよね」