4月8日(金)に最終回を迎えるNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」(総合、月~土曜午前8時ほか)。3世代100年にわたる物語がクライマックスに差し掛かる中、商店街の荒物屋「あかにし」店主の赤螺吉兵衛、吉右衛門の2役を演じた堀部圭亮(56)が「週刊文春」の取材に応じ、朝ドラ出演の反響や共演者とのやり取りなど、撮影の舞台裏を明かした。(全2回の2回目。前編を読む)
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堀部圭亮が見た「カムカムの男たち」
堀部は1966年3月25日生まれ、東京都台東区出身。1990年代には勝俣州和とお笑いコンビ「K2」を結成する一方、放送作家としても「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」を手掛けるなど、主にバラエティ番組で活躍してきた。2000年代以降は、役者としての活動に軸足を移し、大河ドラマ「平清盛」や朝ドラ「花子とアン」をはじめ、名バイプレイヤーとして数多くの作品に出演している。
――算太役の濱田岳さんはアドリブも多かったそうですが。
「吉兵衛さんが『たちばな』に最中を買いに行ったけれど、無かったというやり取りをしていた時に算太が帰ってくるというシーンがあるのですが、あの時に吉右衛門とちょっとした遊びをしているんです。吉右衛門から『ラジオ盗んだおっちゃんだ』って言われた濱田くんが笑いながら、吉右衛門の学生帽を上からぎゅっと押す。そしたら吉右衛門がキャハハハと笑う。その流れがすごく自然で、アドリブだと思うんですよね。あれもどっちかがやりすぎたり、どっちかがやらなかったら成立しなくなっちゃう。算太が最後、あかね通り商店街で踊って太陽を見上げて、こうちょっと涙が出た瞬間も、もう僕はグッときちゃって……濱田くんの演技にやられましたね」
――錠一郎役のオダギリジョーさんは同じ事務所ですよね。
「作品でご一緒したのは『時効警察』以来、2回目。オダギリくんはぼんやりとしているようで色々やっていますからね。今回で言えば、あの小さいピアノをものすごく練習していました。トランペットのシーンもすごいと思いましたね。音を聞いて指の動きを見ても何の違和感もない。ピアノは控室でずーっと弾いていました。それでいて、『僕、練習してます』という顔はしないですからね」
――働かなかったり、逃げ出したり……男性キャラクターの少し情けない姿も話題を集めました。錠一郎、算太、五十嵐、榊原さん……一番の“ダメンズ”は誰ですか?
「視聴者の方からしたら、算太が色んな意味で引っ搔き回していっちゃうから、そもそもお前がしっかりしていたらこんなことにならないんじゃないか、と思うかもしれませんね。でも、どうなのかなぁ。僕は算太という人は、本当はちゃんとしたいんだけど、良かれと思ってやっていることが全部裏目に出るタイプなんだろうなぁと。どこか憎めないタイプで。でも、身内にいたら嫌ですけどね(笑)。あと、よく言われるのは、ジョーが働かないというのもありますね。それこそ、回転焼きの売り上げだけで子ども2人育てていけるのかと」
――計算したら、るいが回転焼きを1日140個売れば、大月家は生活できるようです。
「そうですよねぇ。そういう意味で、働かないジョーをうまく演じるのは相当難しいと思います。それが、ああいう風に見えていたのはオダギリくんの魅力だと思う。演技ってどこか役者の芯が出ると思うんです。オダギリくんの中にある捉えどころのない感じ、ぼんやりした温かさが出ていたなぁと。
ひなたがアメリカ人少年のビリーに受け答えができず、八つ当たりのようにジョーに差し出された回転焼きを振り払うくだりがありました。あそこで『お母ちゃんにも、回転焼きにも謝れ!』と怒ったシーンも相当難しかったと思います。普段のキャラクターとどう変えるのか。目盛りの合わせ方が難しかっただろうな、と。でも、普段見せないジョーの父親らしさがよく出ていました」