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「東京カレンダーに載ってるような店に子どもを背負って行きたい」1年9カ月“飲酒を我慢”した作家が、“家事するなら死んだほうがマシ”な男性に聞きたいこと

柚木麻子さんインタビュー#2

2022/04/08

source : 文藝出版局

genre : エンタメ, 読書, 社会, ライフスタイル, SDGs

「はあ? 自由な発想でマリアージュすることが大事ってさっき、おっしゃったじゃないですか。なのになんで、お母さんがお鮨を楽しんじゃいけないんですか? こういうお店は、部長みたいに誰かに育児や家事を任せられる人だけが、楽しめる場所なんですか?」(「エルゴと不倫鮨」)

 柚木麻子さんの最新短編小説集『ついでにジェントルメン』は、第1話と最後の第7話が、菊池寛にまつわるストーリー。でも第2~6話は、菊池寛と関係ない話が展開されていく。

 ただし、タイトルの『ついでにジェントルメン』という言葉の通り、男女の立ち位置をよくよく考えさせられる内容であることは各話に共通する。さらには、描写が異様なまでのリアルさを帯びて、「アルアル!」感に満ちているのも一貫して際立つ特長だ。

『失楽園』のふたりってなんで命を絶ったの?

「たいていは自分の身に起きたことを始点に書き進めていきますからね。私にとっては、内容にリアリティがあるのが当然といえば当然」

 第2話の「渚ホテルで会いましょう」は、老小説家が自作の舞台となったホテルを再訪し、様変わりっぷりに驚かされる話。これも体験がもとになっている?

「たいていは自分の身に起きたことを始点に書き進めていきます」と話す柚木麻子さん

「大筋はそうです。あるとき家族で旅行しようとなって、鎌倉のホテルをとりました。母と子と私が先に向かい、夫はあとから合流する予定で。ホテルに着くと母が、ここは渡辺淳一先生の小説『失楽園』の舞台になったところだと言い出した。かつてはカップル向けのプランもたくさんあったみたいですけど、今はそう言うのはすっかりなくなって、売店で虫取り網が売っている。近くに『スラムダンク』の舞台になった場所もあるみたいで、すっかりアニオタと子ども連れ向けホテルになっていましたね。

 それでも私は、映画版『失楽園』のロケにも使われたというホテルで当時の残り香をウロウロ探してみました。雰囲気のあるバーがあったり、主演の役所広司と黒木瞳が泊まっていた部屋を見つけたりとおもしろかった。

 その経験を生かして書いていったんですが、宿泊後に『失楽園』を一所懸命に読んでみて疑問に思ったのは、ところであのふたりってなんで命を絶ったの? ということ。ふたりの身にはいろいろあったにせよ、最終的には配偶者から、不倫相手のもとへ走っていいとの承諾を得ています。男のほうは職場に居場所がないなんて言ってますが、彼は大手出版社勤務の高給取りですよ。