「いったい何が不満なんでしょう? 読み進むと理由らしきものが出てきますよ。今が恋愛の一番いいときで、この後に日常が来れば互いに飽きてしまうだろうというんですよ。
え? じゃあそうならないように、男性の側も育児や家事をやればいいんじゃないですか? 育児や家事にコミットしなければ、そりゃ女性には不満も疲れも溜まりますよ。主人公の男性は、家事をやるくらいなら死んだほうがマシと考えているのか。そこまで嫌がられる家事を日々やっている私って何? と思ってしまいました。
この作品に出てくる人物たちと私の見ている景色はあまりにも違う。家事をやりたくないからもう死のうなんて、貴族のお遊びか? と。そんなことを考えながら書き進めた一編ですね」
横向きでしか進めない女性たちの不自由さ
続く「勇者タケルと魔法の国のプリンセス」は、電車の女性専用車両で巻き起こる騒動を題材にしている。
「この作品では常日頃から思っていることに、ストーリーを与えてみたんです。女性専用車両の話をするたびに出てくる男性側の言い分がふたつあります。
『じゃあ男性専用車両もつくってくれよ』
『お前は女性専用車両に乗る必要なんかあるのか?』
というものです。フェミニズムの話をしていても、『心配すんな、お前なんかセクハラに遭わねえよ』と言い出す男性は必ずいる。それがまさにセクハラだというのがわかっていないんですね。
そんなことを言う人はいちど、常に監視され抑圧されている女性と同じ目に遭ってみるといい。抑圧された状態を表すのにいい例はないかなと考えて、ひと昔前のファミコンの横スクロールでしか進めない勇者キャラクターを思いつきました。あの世界に閉じ込められて、ずっと横向きのまま進んでいかなくちゃいけないとしたら、相当きついでしょう? 女性はそれと同じくらいの不自由さの中にいることに、思いを馳せてみてほしいですね」