まるこは人見知りでも、知らない人に囲まれてパニックにならなかった
まるこは、潜在性テストと適性テストに合格して、「セラピードッグとしていける」と判断されたあとに、実地の経験を重ねていった。数頭の仲間の犬たちとともに日帰りで施設訪問をした。
老人ホームや養護施設などで人とふれあい、遊び、人に体験を与える仕事だ。ここでも、人見知りで引っ込み思案の性格は顔を出すものの、その一方で、知らない人に囲まれてもパニックにならないところがあった。
そんな折り、施設で犬を飼おうという計画を立てていたたじま荘と縁があって、お試し宿泊などを経て、譲渡されることになった。現在では、施設の看板犬(看板娘?)として愛されながら日々暮らしているのだ。(そのあたりの経緯は『いやし犬まるこ お年よりによりそう犬の物語』、岩崎書店に詳しい)
セラピードッグの育成は、ボランティアや寄付に頼っているのが現状
まるこがレスキュー協会にいた時代から十数年が経った。いま、協会ではセラピードッグテストとして、100点満点のオビディエンステスト(服従訓練テスト)を受けさせ、「40点以上でアシスタントドッグ合格」「70点以上でセラピードッグ合格」と判定する方式も始めている。
まるこは、兵庫県から表彰され、本になるほどの、名“いやし犬”となったが、その後輩達、6頭がきょうも協会でセラピードッグ研修生として訓練を受けているのだ。
現在、使役犬としてのセラピードッグを統括する公的機関は日本にはなく、日本全体で何頭のセラピードッグが働いているのかは、よくわかっていない。経済的な面から見ても、セラピードッグの育成やアニマルセラピーの多くは、ボランティアやドネーション(寄付)に頼っていることが現状だ。
2017年は、ソニーがロボット犬「aibo」を12年ぶりに発売した年だった。人が犬からのいやしを求めていることは間違いない。これからますますセラピードッグは増えていくはずだ。山梨県の犬捨て山で、最初にまるこを見つけ、彼女の命を救った愛犬家のブルーノ・マルコさんは、こう言っている。まるこの名前は、彼にちなんでつけられた。
「いやし犬か、いやし犬でないかなんて、本当はどうでもよいことなんです。犬がそこにいれば、それだけで、あなたはすでにいやされているのです」