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いやし犬「まるこ」。セラピードッグがお年寄りにもたらす効果とは?

「いやし犬まるこ お年よりによりそう犬の物語」#1

2017/12/15
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 兵庫県豊岡市にある高齢者支援施設「たじま荘」で「まるこ」という一匹の白い犬が“セラピードッグ”として働きながら暮らしています。
 たとえば、入所以来一度も笑わないことで有名だった名物頑固おじいさんは、「いやし犬」とふれあうと次第に笑いを取り戻したといいます。犬が人をセラピーするとは、どういうことなのでしょうか(後編「犬捨て山で生まれた雑種『まるこ』がセラピードッグになるまで」も公開中です)。

山梨県の「犬捨て山」で生まれたまるこ

 あやうく殺処分されそうだった犬が救い出されて、特別養護老人ホームで人生の終幕を生きる人に楽しみと張り合いを与えている。兵庫県豊岡市にある高齢者支援施設「たじま荘」へ会いにいくと白い犬が迎えてくれた。

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「いやし犬いうても、どっちが癒していて、どっちが癒されているのかわからへんわ~、なあ、まるこ」と職員さんが笑いながらなでている雑種の犬。白い耳は食パンのようだ。まつげまで白い。年は12歳。女の子。ここ「たじま荘」で“セラピードッグ”として働いて10年以上になる。

12歳のまるこ ©前川政明

「この子におやつをあげるのが楽しみでなあ。なあ、まるこ。あんたは手をなめてくれるもんな。それがうれしいんやで」

 と利用者は語る。

保護された当時のまるこ ©マルコ・ブルーノ

 ときにはまるこがいるロビーに向かって車いすが渋滞するほどだ。生き甲斐を人に与える犬がここにいる。

 まるこの生まれは、山梨県の「犬捨て山」。捨て犬とその家族が400頭いた。救出されて、兵庫県伊丹市のNPO法人・日本レスキュー協会へ。

 そこで、訓練を受けて、セラピードッグとして兵庫県豊岡市のたじま荘に譲渡された。これが彼女の“人生”。人の手で殺されそうなところだったが、いまや人生の終幕あたりを楽しむ老人をいやす。

 なんとも数奇な運命である。

 犬がセラピーするとはどういうことか。