1ページ目から読む
3/4ページ目

自殺は「学校生活に関する要因」が大きかった

 しかし、遺族が調査部会の設置を知ったのは報道によってだった。文科省の「いじめの重大事態に関するガイドライン」では、遺族に対して調査の説明をすることになっているが、今回のケースでは説明はなかった。また、遺族は、いじめに関するアンケートの原本を見ようと開示請求をしたが、実現しなかった。

「山口県の条例では『亡くなった人』の個人情報は開示の対象外なんです」(同前)

 2017年10月27日、調査委は報告書を完成させた。それによると、「いじめ」もしくは、「いじめに該当するものが含まれる」出来事として、日常的なからかいのほか、テニス部内での人間関係、野球部に移籍する際のLINEグループ退会などが認知できるとした。

ADVERTISEMENT

 その上で、自殺について、「『学校生活に関する要因』が大きかったと考えられる。いじりやからかい、友達関係のほころびなど、様々な継続的ストレス要因が長期にわたって継続することの影響の程度が大きかったと考えられる」としたほか、個人的要因にも触れた。

山口県による再調査報告書 ©渋井哲也

教職員にも疑いがあるのであれば、調査すべき

 さらに、いじめとの関連性については、「『いじめ』が自殺に影響したか否かと問われれば、『影響した』と答えることができる」「当該事案は様々な要因からなる複雑な事象であり、一つの要因だけで説明できるほど単純ではない。よって、『いじめ』のみを自殺の要因と考えることはできない」と、いじめと自殺の因果関係を否定した。

「調査部会長は、加害者とされる生徒の出身中学の元校長でした。部活動のことは調査されませんでした。報告書の内容では、具体的に、どの要因が大きいのかわかりにくいのです。海都の個人的な性格の要因ともとれます」(同前)

 遺族は、知らない部分もあったことが指摘されたことは評価できた。しかし、教員の「いじり」もあったが、海都さんのストレスになっていたかの検証はされていない。

「高校入学後、中学までとは違うイライラを募らせているとは感じていましたが、『思春期の反抗期かな?』と思っていました。周囲の親に聞いても、『うちと一緒』と言われる範囲で、変わったというほどのものではなかったんです。今から考えても、『これがサインだ』と思えるようなものはありません」(同前)